研究課題/領域番号 |
19K01229
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
奈倉 京子 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (70555119)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 障害者家族 / 中国 / 中間的領域/組織 / ポスト社会主義的状況 / 「新しい社会性」 / 家族回帰 / ライフストーリー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2000年以降の中国のポスト社会主義的状況に生きる障害者/家族が、(断絶された)他者、家族、そして障害のある子をもつ以前の自己とのつながりをどのように回復、調整、構築、再編しているかを、2つの側面―①個人と国家の中間的領域/組織の役割、②障害のある子をもつ家族の生き方の選択―から考察し、これにより、中国の障害者/家族の「新しい社会性」とは何かを解明することである。2021年度は、②に重点を置いて障害者家族のライフストーリーの分析を集中しておこなった。 分析の結果、「家族回帰」の多様な状況が明らかになった。特に、日本や西側諸国の障害者家族と異なり、祖父母のケアの全面的な介入がみられ、「近代家族」の中の母親とは異なる生き方を提示することができた。また、中国・社会主義国に独自のジェンダー規範と障害のある子をもつ母親のキャリア追求とのかかわりも明らかにすることができた。更に、①によって得られた「中間的領域」との相互作用も探究した。 このような議論をポスト社会主義人類学の議論の俎上に乗せ、「全体主義モデルの中国像」という一枚岩的性質を解体し、中国というポスト社会主義社会の地域的な独自性、特殊性を明らかにするために、これまで得られたデータと先行研究を突き合わせて思考を重ねた。研究会での報告、論文執筆により、人類学、社会学(福祉社会学、家族社会学)、障害学を専門とする研究者と意見交換をした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に沿った調査研究が概ね遂行できているが、ライフストーリーの聞き取りについては、現地へ行き、対面で行う予定であった。しかし、コロナウイルス感染状況拡大のため、SNSを利用しておこなうことになった。障害者組織の参与観察については、2019年度を最後に続けられずにおり、この点は計画通りに進められたとは言えない。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、本研究で得られた新たな知見を人類学、社会学、障害学の分野へ提示していきたい。また、2020年、2021年度に実施できなかった現地調査について、状況が許すようであれば実行したい。 報告書に基づき、論文にまとめ、商業出版の準備をする。出版により、障害者家族/福祉、社会主義国のソーシャルワーク、中国地域研究等に興味関心のある研究者、一般の読者へ向けて、知識を還元していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
中国での現地調査が実施できなかったため。
|