研究課題/領域番号 |
19K01237
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
中原 聖乃 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (00570053)
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研究分担者 |
渡邉 英徳 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (00514085)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 核実験 / 温暖化 / ワークショップ / 共創 / 超学際的研究 / マーシャル諸島 / 語り / トラウマの記憶の継承 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度コロナウイルスの日本での流行により、今年度に延期になったマーシャル諸島デジタルアーカイブキックオフイベントを2か月間にわたって実施した。コロナ禍において実施できるよう、キックオフイベントはマーシャル諸島側のみで実施する「ワークショップ事前学習」と、日本側とズームをつないで実施する「デジタルアーカイブワークショップ」の二つに分けて実施した。「ワークショップ事前学習」は、フィールドワーク、インタビュー、情報の整理を含み、ワークショップに先立ってマーシャル諸島で若い学生が実施した。「デジタルアーカイブワークショップ」については、日本サイドで作成したデジタルアーカイブのプロトタイプに、参加者が撮った動画・写真・テキストなどのインタビュー情報を紐づける方法を学んだ。 このマーシャル諸島デジタルアーカイブキックオフイベントの準備期間中に、マーシャル諸島政府の核問題委員会メンバーとの信頼関係が醸成できた。また、マーシャルサイドでは、最高学府であるマーシャル諸島短大、アレレ博物館、2つのNPO、日系企業、日本サイドでは、日本のベンチャー企業、第五福竜丸展示館、大学生、NPOとの関係性も構築できた。 もっとも大きな成果は、ワークショップ参加者の熱意である。現地ではビデオ撮影を行ったが、十分なインターネット回線がない中で、3日間もかけて、ビデオ映像を送ってくれた。そこにはズームでは見えなかった、学生同士が生き生きと語り合う姿や、画面を食い入るように見つめる表情が映し出されていた。コロナ禍におけるカウンターパートの潜在的な力を確認できたことが最も大きな収穫であり、本プロジェクトチームの日本側のモチベーションも高めてくれるとともに、TD研究としても大きな成果が得られることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルスの流行が長引き、マーシャル諸島への入国が不可能であるために、現地で実施予定のフィールドワークとインタビューのプログラムの立て直しに時間を要した。本年度は、オンラインで実施することができた。オンラインでの実施に切り替えたことで、日本国内からもNPO、博物館、大学生が気軽に参加することができた。また電力供給やインターネット回線の不安定さがあるマーシャル諸島とのオンラインでの実施に先立って、数回にわたっての打ち合わせを実施したことで、密な関係を構築できた。現地でのワークショップを想定していた時は、フィールドワークとインタビューの日を特定していたため、参加人数に不安があったが、学生の自主性に委ねたところ、多くの参加者があった。ただし、本年度ワークショップを実施できなかったため、予定していた学会発表はできなかった。 本年度の大きな成果は、デジタルアーカイブのプロトタイプとデジタルアーカイブへの入力フォームを作成したことである。 Re:Earth(デジタルアーカイブプロトタイプ) https://marshall.reearth.io/?fbclid=IwAR1tsUvecXOvubMLGWIMHFnxDyW9qMstK8p3_LQPY7gwa6guDRh6eZVqanI
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ワークショップで得られた反省点や、ワークショップ時に回収した参加者の感想レポートを取りまとめ、システム改善に活かしていく。当初は、年一回のワークショップを3年繰り返し、システムは非公開で進める予定であったが、マーシャル諸島から完成を待ち望む声と参加者の熱意が高いことから、早い段階で、デジタルアーカイブシステムを公開しながら、完成を目指す。その際、被ばくというトラウマをどのように公開するのか、また被ばく者へのインタビューの在り方については十分に参加者と討論を重ねていく。 今後は、オンラインの特徴を最大限に生かし、ミニワークショップを重ねて密な連絡を心掛け、信頼関係のさらなる醸成に努めたい。 また、このデジタルアーカイブ作成の4年間のプロセスは、出版することをマーシャル諸島側からも了承を得た。日英両言語での出版を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの流行が長引き、現地でのイベントを中止したこと、および海外学会発表の渡航費の支出が大幅に減ったためである。次年度は、コロナの動向に適応しながらも、公文書や画像資料の整理や公開に、予算を投入する。
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