研究課題/領域番号 |
19K01238
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
常田 夕美子 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 外来研究員 (30452444)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 災害復興 / 女性 / 親族 / 家族 / ネットワーク / 相互援助 / インド / 婚姻 |
研究実績の概要 |
今年度は、3回にわたり調査地での聞き取り調査を行った。当該地域は、2019年5月上旬に上陸した大型サイクロン「ファニ(Fani)」によって多大な被害を受け、復興の最中である。そのため、2019年8月の現地調査は、サイクロン当時の様子、面談者たちの家族の安否、居住地や出身地の被災状況を中心にインタビューをした。そこで明らかになったのは、女性たちが被災時に政府の援助を受けるのは最終手段であり、可能なかぎり家族・親族のネットワークを通じて相互援助をすることである。2019年12月の現地調査では、嫁入り道具の変化について、プリーのアーシュラムでインタビューを行った。その結果わかったのは、女性出家者たちは、出家した後も、家族・親族のネットワークとつながっており、世俗の変化に通じていることである。世を離れ修行をする者として、世俗で苦しむ家族・親族を励まし、アドバイスをすることもある。親族の婚姻の際には、アーシュラムを通じて嫁入り道具の支度を手伝うこともある。2020年2月の現地調査では、夫と死別または別居し実家に戻ったり、介護に携わっていたりする女性を中心にインタビューした。その結果わかったのは、女性たちは、夫に先立たれたり、別居したりして実家に滞在中の場合でも、婚家と携帯電話などで、頻繁に連絡をとりながら、自らや子どもの安全を確保していることである。介護が必要な夫を持つ女性は、夫の世話を一人で抱え込まず、家族・親族・友人・使用人のネットワークを使い、自らの心身の健康を保っている。今年度の調査研究において総合的に明らかになったのは、女性たちによる家族・親族のネットワークの創造的な構築・再構築であり、それぞれのネットワークを通じた彼女たちの助け合いの方法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、2019年5月上旬に上陸した大型サイクロン及び2020年2月から当該地域で問題になった新型ウィルスの影響により、調査研究の進捗がやや遅れている。まずは、大型サイクロン上陸のため、女性たちが住む家屋が倒壊・反倒壊し、生活が困窮し、彼女たちのライフヒストリーについて聞き取りを行うような状況ではなかった。取集する予定だった女性たちの日記や歌を書いたノートについても、住宅の復旧などで忙しい女性たちに、ノートの保管状態や貸し出しなどについて尋ねる雰囲気ではなかった。そのため、女性たちがその時点でそれぞれ重要だと思っていること(生活の復旧、家族・親族の安否、地域の復興)を中心に聞き取りを行った。さらに、2月での現地調査では、新型ウィルスの影響により、調査地での移動がほぼ不可能になり、かぎられた場所及び人たちへのインタビュー実施にとどまった。そのため、滞在先だったアーシュラムの支部及び本部の住民やそこを訪れる女性たちを対象に集中的に聞き取りを行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、引き続き、現地調査及び文献調査を実施する。ただし、現地調査については、新型ウィルスの影響により、インドへの渡航が困難になることが予想される。現地調査が実施できない場合は、可能な範囲で、インターネットを通じて、現地の情報を収集し、スカイプ、WhatsAppなどを通じて女性たちとのインタビューを実施したい。
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