研究実績の概要 |
今年度も新型コロナウイルスの影響によりインドへ渡航できなかったため、現地調査は実施せず、国内でインターネット上の情報収集、文献調査、これまでの現地調査内容の整理を行った。インターネット上の情報収集の結果、明らかになったのは、コロナ禍における結婚式の新たな参加方法である。従来は、結婚式の招待状は紙のカードであったが、コロナの状況の中、出席できない人には、WhatsAppやMessengerでのやりとりを通じて招待状の電子版を送り、祝福のメッセージを受け取るケースが見られる。結婚式の写真やビデオもWhatsApp, Instagram, Facebookなどを通じて公開することによって、当日参加した人も、参加できなかった人も、オンラインで祝福するコミュニティを形成する。オンラインのやりとりやコミュニティの構築は、女性のネットワークにもとづくことが多い。そこで重要なのは、5-6年ほど前までは、インターネットへのアクセスが困難だった50代から60代の女性たちが、新たに獲得しつつあるデジタルリテラシーである。従来、中年・高齢女性は、Facebookなどのソーシャルメディアにアクセスする際には、夫や子どもが操作するパソコンの端末に頼っていたため、自由に情報の送受信ができなかった。しかし、近年のスマートフォンの普及によって、中年・高齢女性もそれぞれ自分の端末を持つようになり、一人でもやりとりができるようになった。近年における結婚式に関する連絡の電子化も、そのような女性たちが新たに獲得した主体性の現れだと思われる。
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