研究課題/領域番号 |
19K01241
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
水野 浩二 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (80399782)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヨーロッパ / 中世 / 近世 / 法学 / 手引書 / 実務 / 民事訴訟 / 日本 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、新型コロナウィルスのため海外での史料調査が前年度に引き続き不可能だったため、既に手元にある史料やデジタル化された史料で可能な限り、15・16世紀の予防法学文献の検討を継続し、最終年度における成果取りまとめに向けて、以下の点を取り上げ論ずることにした。Pieter Cornelis van Brederode(1558?~1637)のEurematica sive cautelaeにつき、①Brederodeの生涯、②著作の基本的特徴・叙述プラン、③内容の特徴(契約を扱う第一部に絞って検討する)。①②③いずれにおいてもBrederodeにおいて下敷きにされたCaepollaとその著作同様に、人文主義と法実務の結合が強く見いだされる。このことは単に両者が「中世法学と近世法学の移行期」に位置したというに留まらず、中世法学末期における変化、そして人文主義法学自体に法実務に親和的な側面が見られたことを重視して論ずることになろう。 本研究の基本テーマは「法学と法実務の相互作用」であるが、研究代表者が明治民事訴訟法期についてかねてより行ってきた研究を取りまとめ、単著として公刊することができた。法実務におけるイシューが立法や判例・学説に大きな影響を与えたこと、ある事象に対する結論が諸アクター間で同一でも、それを支える認識には大きな相違がありえたことなどを、具体的レベルで明らかにすることができたと考える。また、中近世学識法と明治民訴法期をとりあげつつ、予防法学文献を始めとする手引書を考察するための理論的枠組について論じた依頼原稿が、公刊された。手引書はこれまでわが法(史)学界ではほとんど検討されてこなかった史料類型であり、今後の研究の進展につながる論点を提示できたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最大の理由として、新型コロナウイルス禍が今年度もなお終息に至らず、Brederodeやそこに合本・整理されていったCaepolla・Raimund Pius Fichardらの著作のうち、デジタル化されていない版の現地図書館での調査・確認、関連する史資料の調査・収集を行うための海外出張が不可能になったことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
一年間の研究期間延長を認められたので、すでに定まった方針に従い、研究成果の最終とりまとめに向けた作業を継続して完成させ、学会報告や査読付き雑誌への投稿を行う。ヨーロッパ諸国のコロナウイルス禍の終息をまって、関連史料の現地での調査・確認作業を速やかに実施し、研究成果の取りまとめにできる限り反映させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度においては新型コロナウイルス禍が世界的になお収まらず、外国出張を予定していたヨーロッパ諸国においても入国制限・入国後の行動制限が年間を通じて実施された。国内でも地域間移動の自粛が年間を通じて強く要請された。その結果、海外での史料調査・研究者との意見交換、国内での学会・研究会への対面での参加などは全く不可能となった。 そのため、上述のように今年度は手元に揃った史料を用いた作業に注力し、令和4年度において外国・国内出張とそのための準備を実施するための予算として、1,398,435円を残すこととなった。使用計画は、「今後の研究の推進方策」欄に記載したものを想定している。
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