研究課題/領域番号 |
19K01242
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
会澤 恒 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (70322782)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 私人による法実現 / 仲裁の消費者化 / 民事司法の縮小 / クラスアクションの放棄 / 現代アメリカのビジネス保守 / 消費者法リステイトメント |
研究実績の概要 |
本研究は、米国において、消費者契約や個別的雇用契約においても仲裁条項が広まっていること(「仲裁の消費者化」)を踏まえた上で、それをめぐる実定法規範の構造と背景にある法文化・政治過程を検討するものである。 本年度は、仲裁条項の取扱いに関する契約法上の動向に焦点を当てた。アメリカ法律協会が策定し米国法に大きな影響を有するリステイトメント・プロジェクトの一環として、消費者法リステイトメントの策定作業が進行中である(2024年採択予定)。そこにおける仲裁の取扱いに着目した。消費者契約においては消費者に一方的に不利な契約条項の統制が課題となるが、第一に、そのような条項の典型として仲裁条項が主要な関心の対象になっていることを確認した。第二に、本プロジェクトでも既に明らかにしたように、仲裁条項のみを対象として規制を加えることは合衆国最高裁判決(AT&T v. Concepcion (2011))によって認められないことから、仲裁条項に強い関心が向けられているにもかかわらず、いかに契約一般の統制として規制を加えるかというのが政策課題として浮かび上がっており、その回路が模索されていることが注目に値する。加えて、同リステイトメントの策定に際してはEUの消費者法も参考にされているという点も注意を引いた。孤立して我が道を行く傾向の強い米国法においても、他国の規制動向に注意を払う意識が持たれていることに、「仲裁の消費者化」を推進しているビジネス保守に対抗するためのリソースを見出そうとの態度を看取することもできよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、パンデミックによってこれまで実施できていなかったアメリカ合衆国へ渡航しての現地調査をようやく実施し、彼の地の研究者・実務家と意見交換を行うことができた。対面によってニュアンスを伴った意見交換の重要性を改めて感じた次第である。文献研究を中心とする従来の検討で獲得した知見を確認できた一方で、見落としていた視角や法現象について認識を更新することができ、外国研究としての精度を高めることができた。 また、本プロジェクトに関する既発表業績に基づいて、米国との渉外事件に関与している実務法曹から照会を受ける機会があった。本研究の社会的意義を再認識した次第である。
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今後の研究の推進方策 |
パンデミックに伴う延長により当初の研究計画よりも長期化した結果、研究対象たる米国の実定法制・法実務それ自体にも新たな事象が見受けられる(パンデミック自体がもたらした新たな変容もある)。このため、取りまとめにあたり対象の拡散に留意をしなければならないが、これまでの検討では研究をよりリッチにする変容であると捉えており、その方向で取りまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
さらに一度の米国へ渡航しての現地調査を3月に計画していたが、本年度に行った渡航調査で明らかになった点について検討を深めた上で実施するほうが効果的であると判断し、渡航を延期した。また、国内の出張を伴うヒアリング・研究会出席・打ち合わせについては、他の研究プロジェクトと用務を連続させることで費用を圧縮するとともに、一部をオンライン会議で代替することで経費を節減した。 次年度に改めて渡航調査を行うことを計画している。近時、航空券等が高騰しているが、節減した予算を充当することでカバーが可能であると考えている。
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