研究課題/領域番号 |
19K01244
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山口 道弘 九州大学, 法学研究院, 准教授 (60638039)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 官学アカデミズム史学 / 三上参次 / ヘルバルト派教育学 / 硬文学 / 史論 / 文明史 / 修史館史学 / 応用史学 |
研究実績の概要 |
中田薫が、その学問を形成した時代は、官学アカデミズム史学が勃興する時代でもあり、中田の業績も、官学アカデミズム史学の発展形態と把握しうるであろうと云う見通しに基づき、本年度は、明治20年代から30年代に於ける、官学アカデミズム史学成立の過程とその特質とを、その中心人物である、三上参次を軸に纏めた。 三上参次に代表される官学アカデミズム史学は、第1に、洋学系文明史学の継承者であった。三上は、皇典講究所や帝室博物館に集う国学者、蘇峰や愛山等の政治評論家たちによって修史館史学に加えられていた批判(「考証ばかりで論理がない」)に同調して、個々の事実の考証よりも、因果関係の解明を重んずる文明史を積極的に取り入れたのである。 第2に、三上等の官学アカデミズム史学は、同時代に活躍した愛山や三叉などの史論家と同様に、文学的インスピレーションを読者に与え、読者の人格を陶冶することを志していた。とりわけ、愛国的な人格を涵養することを強く志向していた。彼等は、文学界に於ける、「硬文学」の一員だったのである。 第3に、官学アカデミズム史学は、歴史教育に積極的に参与した。三上は、それまでの修史館史学による抹殺論の射程を歴史研究(純粋史学)に限局し、歴史教育(応用史学)では、抹殺論の対象となったような歴史物語を、むしろ大いに活用すべきだと説いた。時あたかも、歴史教育に関し同様の主張をなしていたヘルバルト派教育学の興隆期にあたり、彼等と官学アカデミズム史学とは協働しうるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記内容は、山口道弘「三上参次と官学アカデミズム史学の成立」法政研究第86巻第4号(令和2年3月)として公刊した。これは計画所定通りである。 また、令和2年2月には、東京大学法学部原資料部所蔵、中田薫「懐旧夜話」、及び、中田薫述の講義筆記ノートを調査した。これも予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍のため、調査旅行は殆ど行えず、また大学図書館も現在閉鎖中である。致し方ないので、手持ちの史料を使って、どうにか、明治末年までの官学アカデミズム史学の展開過程だけでも纏めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
春休み期間中の2,3月に予定していた調査旅行が、コロナ禍のために、全て中止せざるを得なくなったため残額が生じた。 2020年度も外出調査は難しいであろうから、繰り越し分は、文献の取り寄せや購入、および複写費用などに充当したい。
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