研究課題/領域番号 |
19K01251
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研究機関 | 秀明大学 |
研究代表者 |
中網 栄美子 秀明大学, 学校教師学部, 講師 (10409724)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植民地 / 帝国日本 / 南洋庁 / パラオ / コロール / 国際連盟 / 委任統治 / 高等法院 |
研究実績の概要 |
現在のパラオやマーシャル諸島、北マリアナ諸島、ミクロネシア連邦に相当する領域は「南洋諸島」と呼ばれ、第一次世界大戦終結後に国際連盟からの委任統治という形で帝国日本の実質的な支配下に入った。帝国日本は、ここに施政機関として「南洋庁」をおき、本庁をパラオ諸島のコロールに、支庁をサイパン、ヤップ、パラオ(西カロリン群島)、トラック、ポナペ、ヤルートにおいた。この「南洋庁」による統治は第二次世界大戦終結後までの約25年間続くことになる。帝国の植民地政策により、本国から南洋諸島に渡る者は時代を下るに従って増加し、最盛期には7万人を超える「日本人」(この中には実際には台湾人や朝鮮人が含まれる)が居住していた。 本研究では、同領域の法と裁判について明らかにすることを目的とする。制度的には第一審としてパラオ地方法院、サイパン地方法院、ポナペ地方法院の3法院が、第二審(最終審)としてコロール島に高等法院が設置されたことが知られている。しかし、これらの裁判所でいかなる裁判が行われたのか不明な点が多い。 前年度に続き、本研究では現存する行政資料から可能な限り当時の再現を試みた。 研究初年度にあたる平成31/令和元年より日本国内における資料調査及び先行研究調査を行った。具体的には①『南洋庁公報』(1922年~1939年)②『委任統治地域南洋群島事情』(南洋協会南群島1931年)③『南洋群島現勢要覧』(1926年ほか)④『南洋群島要覧』(1934年ほか)⑤『南洋庁職員録』(1941年ほか)⑥『司法部職員録』(南洋庁法院,1925年ほか)⑦『南洋庁統計年鑑』(1933年~1941年)⑧『南洋群島人口動態年表』(1938年)⑨『南洋群島々民旧慣調査報告書』(1939年)⑩『南洋庁法令類聚』(1928年ほか)など公的刊行物を中心として行った(継続中)。併せて、国内における資料調査を沖縄県公文書館で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度(2019年度)について、夏季は研究の進捗に問題はなかったものの、年明け(2020年)より新型コロナウイルスの感染拡大が影響して研究計画の変更を余儀なくされた。国内では2020年2月28日~6月1日まで国立公文書館が閉館し、デジタル資料については継続して研究調査を進めることができたものの、原資料についてはアクセスすることができなくなった。また、2020年3月に予定していた米国公文書館における資料調査は出入国がいつ制限されるか分からない状況下で中止せざるをえなくなった。 次年度(2020年度)は新型コロナウイルスの状況が不透明であったことから、研究の推進方策として前年度より柔軟に研究スケジュールを立てておいた。しかしながら、当初予定していた米国公文書館及び英国公文書館における資料調査やパラオ現地調査などの海外調査は全て実施不可能となった。また、沖縄県公文書館における資料調査も、沖縄県における感染者拡大の影響で、同館が利用者数及び利用時間を制限したりしていた関係で令和3(2021)3月の1回しか調査に行くことができなかった。 さらに、研究者同士の意見交換の場として、国内においては法制史学会、海外においてはAAS(アジア学会)などの年次総会への出席を検討していた。これらもまた開催が中止となったり、オンライン開催となったりなどして、他の研究者との交流の機会が激減してしまった。 所属する大学では前期4月中の授業がほぼ休講となり、5月から急遽オンライン授業の対応に追われることになった。また、後期については一部で教室授業が再開されたが、今度はハイフレックス授業の対応に追われることになった。例年であれば8~9月と翌2~3月の授業がない期間にある程度まとまった研究時間を確保することができたが、授業スケジュールや授業形態が大幅に変更となった結果、研究時間を削らざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度以上に、新型コロナウイルスの感染状況が不透明な状況で具体的な研究スケジュールを立てることが非常に困難な状況である。これまでに収集した資料とインターネット上で利用できるデジタル資料から可能な分析を行いつつ、原資料の調査や現地調査などを行う計画についても希望をもってゆきたい。 令和3(2021)年4月、東京都において3度目の非常事態宣言が発令された。当初予定期間は4月25日~5月11日であったが、変異ウイルス感染者の増加状況から5月末までに延長された。これを受けて国立公文書館(同館にて原資料調査継続中)も4月25日より「当面の間」休館となってしまっている。同じく調査継続中である沖縄県公文書館も開館はしているものの、閲覧室は予約制で利用人数と利用時間の制限が続いている。これらの状況をふまえ、両館における資料調査は8月下旬から9月中旬の期間を仮に予定する。 米国、英国、パラオなどへの海外調査がいつ再開できるか不明である(5月10日現在米国公文書館は閉館中であり再開日程は未定、英国公文書館は開館しているが事前予約制であり開館時間も短くなっている)。そもそもワクチン接種がいつできるか不明な状況下で海外渡航については現実的には難しく年明け以降、来春2月~3月に「可能であれば」実施することとする。 以上、本研究を遂行する上で前年以上にマイナス要因が積み重なっているものの、なお研究続行には意欲的に取り組んでゆきたい。海外調査については不可能であった場合、予算面の制約はあるが、複写依頼をして取り寄せることができる資料があれば、その方法も試行する。しかしながら、前年度と同じ状況が今年度を通じて続いた場合、研究の遅れを取り戻し3年間で計画を完成させることは現実不可能となる。その場合はやむをえないことではあるが研究の1年延長も視野に入れて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2(2020)年は国内資料調査として国立公文書館(つくば分館)と沖縄県公文書館へ行くことを予定していた。前者については、つくば分館閲覧室が同年8月で閉室となり利用できなくなった。資料は東京本館で閲覧できるということだが、申込及び移送の手続きに従来より時間がかかることと、新型コロナウイルスの影響で利用制限があることが重なり計画通りにゆかなくなった。海外資料調査として、当初は米国公文書館とパラオの現地調査を予定していたが海外渡航の制限と調査先の休館により、いずれも実施することができなかった。 国内・海外とも資料調査に困難があったため、デジタル資料による研究と分析を先に進めるため、さらにはZOOMなどを利用してオンライン研究会で意見交換などをするため、当初予計画にはなかったノートPCやタブレットを追加購入した。 当初の計画では、国内においては法制史学会の年次総会出席を予定していた。しかし、今年度の学会は中止(翌年へ延期)となり、翌年度の実施も未定の状況である。同じく、当初の計画として国内は国立公文書館の資料調査、海外は米国公文書館の資料調査とパラオ現地調査を予定していたが、いずれも休館中であり、かつ、海外渡航制限もあることから具体的な計画日程を立てることが難しい。オンラインでカバーできる研究を率先して行うが、場合によっては完成年度を1年延長することも視野にいれて研究を続行する。
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