研究課題/領域番号 |
19K01252
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
長 友昭 拓殖大学, 政経学部, 教授 (20555073)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 民法典 / 中国 / 農村土地請負法 / 三権分置 / 農地法 / 所有権 / 土地所有権 / 物権 |
研究実績の概要 |
今年度は、中国民法典制定前の法状況及び比較の視座としての日本法の状況に重点を置いて研究に取り組んだ。 日本法については、不動産法の視点から、農林地の原発被害をめぐり、土地所有権に基づく物権的妨害排除請求権の視点から、自己所有地の土壌の入れ替えを求める訴訟について、判例評釈として不動産学会誌で研究成果を公表した。 比較法の視座から、日中の民法改正をめぐる日本の研究者・実務家が集まる研究会で、中国の研究者を招いた特別研究会の際に、両国の改正動向の移動を浮かび上がらせるための動向紹介を行い、中国人民大学法学院長の王軼教授及び東京大学名誉教授・早稲田大学特命教授の内田貴教授のコメントをいただいた(長友昭「中国民法典の制定をめぐる話題提供」日中比較法研究会、2019年7月2日)。 中国における農地の所有と利用をめぐる権利の分化に関する注目政策である「三権分置」について、2018年の「中華人民共和国農村土地請負法」の改正および2019年に公表された「中華人民共和国民法典(草案第2稿)」を法的側面から批判的に考察して、日本現代中国学会の学術大会で報告した(長友昭「中国民法典制定前後の農地制度にかかわる法的課題―法と政策の展開と民法典の整備に向けて」日本現代中国学会、2019年10月20日)。台湾大学法学院のシンポジウムに招待され、日中の農地制度の最新動向を報告し、台湾大学の黄詩淳副教授との間で、台湾農業経営との比較と相続制度における課題の質疑がなされた(長友昭「日中農地制度の最新動向」中国法制比較研究、2019年12月16日)。これらの成果として、同法の新旧対照条文及び簡単な解説を公表した(長友昭「中華人民共和国農村土地請負法(2018年改正)および関連事項の紹介 ―農地「流通」の法から権利を切り出す「三権分置」の法へ―」拓殖大学論集 政治・経済・法律研究22巻2号、2020年3月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中国民法典制定の前提となる農村土地請負法等の改正は着実に進められ、それらの分析は比較的順調に進められた。 他方で、研究計画においては、2020年の2月から3月にかけて中国での現地調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で、調査を断念・延期せざるをえなかった。 また、中国の民法典は、当初2020年3月5日開幕予定の全人代で採択の予定とされていたところ、やはり新型コロナウイする感染症の影響で、その開幕が5月下旬に延期されており、同法の制定及びそれにまつわる注釈書等の公刊も遅れている。 立法や資料は、今後状況が落ち着き次第、遅れて入手可能になるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、(1)都市および農村の不動産への市民のアクセス(契約法、関連する不動産特別法)、(2)その権利の性質(民法総則)、(3)権利保護の確実性(物権法、関連する不動産特別法)、(4)権利侵害時の救済方法(不法行為法、債権総論、環境法)、(5)家族への引き継ぎの確実性(相続法)がどう規定されるのか、を掲げていた。 ここまで(1)について取り組み、立法自体がやや遅れているので、立法後の資料が出そろうまでの間に、(4)および(5)に関する論点、特に中国的特色のある制度や概念の理解を深めることとする。民法典制定後は、条文テキストの分析に取り組むこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年2月から3月にかけての中国出張が不可能となり、立法の遅れにより立法関連資料の発刊も遅れることになって、資料の購入ができなくなったため。
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