本研究は、関東とならぶ拠点地域であった江戸時代の上方を主なフィールドに、幕府の政治機構や法令・裁判のあり方を実証的に解明するものである。2023年度の成果は次の通り。 (1)2023年12月、『日本近世史を見通す2 伝統と改革の時代』に「将軍吉宗の改革政治」と題する論文を執筆した。そこでは、大坂側の史料を全面的に活用し、享保後期における徳川吉宗の政権運営や改革政治のあり方と特徴、その転換などを実証的に明らかにした。 (2)2024年2月、『日本近世史入門―ようこそ研究の世界へ!―』に「幕府機構論―江戸幕府のしくみと政治のあり方を考える―」と題する章を執筆した。そこでは、幕府の政治機構について、基本的なしくみや特徴と主な先行研究の成果や視角・方法を解説し、今後の研究を展望した。 (3)2024年3月、『關西大學文學論集』第73巻第4号に「「検使見合書留」(一)―江戸中後期の京都代官に関する史料の紹介と分析―」と題する論文を発表した。そこでは、江戸中後期に京都代官が裁判や行政に関する重要な事例をまとめた史料「検使見合書留」の前半部分を翻刻・紹介した。 (4)2023年8月に京都市生涯学習総合センター山科で「御触書にみる江戸時代の京都―天明・寛政期を中心に―」、10月に高槻市立生涯学習センターで「絵図・名所図会・御触書にみる江戸時代の大坂」、11月に宇治市生涯学習センターで「江戸時代の裁判」と題する一般向けの講演を行った。 そして、補助事業期間全体を通じた本研究の成果は、次の3点にまとめられる。①幕府の政治機構や法令・裁判と、将軍吉宗の政権運営や改革政治について、それらのしくみや特徴と時期的な変化を具体的に明らかにした。②本研究に関する未刊行で重要な史料を翻刻・紹介し、学界の共有財産とした。③一般書・入門書の分担執筆や自治体・大学での講演等により、本研究の成果を社会や国民に発信・還元した。
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