研究課題/領域番号 |
19K01260
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
島田 弦 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (80410851)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インドネシア / アジア法 / 比較憲法 / ポスト権威主義 / 民主化 / 非自由主義立憲主義 / アジア憲法 |
研究実績の概要 |
本研究は、権威主義から民主化へ移行したインドネシア憲法体制の変化と継続性、課題、独自性を明らかにし、比較憲法学の課題となっている非自由主義立憲主義としてポスト権威主義の憲法モデルの構築することを目的としている。1998年、インドネシアのスハルト権威主義体制が終わり、その後、権威主義体制を支えた憲法が改正され、抑圧的な法令が廃止された。しかし、実際の憲法の運用および法令の制定・適用は、欧米的な立憲主義とは異なるものとなっている。そこで、ポスト権威主義体制における憲法の特徴、権威主義からの変化と連続性を明らかにする必要がある。 この目的のため、本研究課題では、憲法改正の過程と議論、関係法令の制定プロセス、行政決定など法の適用、裁判判決の分析、および、憲法・法令に関する社 会・政治的利害関係を多角的に考察する方法で、インドネシアを事例にポスト権威主義国家の憲法の特徴と機能を明らかにする。 2019年度後半からコロナウィルスにより渡航調査が不可能となり、2020年度後半に状況が改善することを前提に、特に関係する法令及び判例の収集とその内容の整理、方法論の一つとしている法令マッピングの準備、報道・調査報告書などの資料から聞き取り調査を行うための対象・項目の選定を計画していた。 しかし、結局、現在に至るまで渡航しての調査は不可能となっている。 そのため、2019年度末から2020年度は本研究課題に関する理論的課題の整理に研究活動を集中してきた。これにより、2020年度にはインドネシア法に関する編著書1冊を公刊し、その中にインドネシア法、インドネシア憲法および東ティモール法に関する単著論文4本を収録した。また、法制度改革に関する課題及び理論に関する論文2本を収録する、共編著書1冊を2021年度に入ってから刊行することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、本研究課題実施の方法論の一つとしている法令マッピングの準備、報道・調査報告書などの資料から選択した聞き取り調査を行う計画であった。 そのために、2020年3月に現地調査及びインドネシアにおける研究報告を予定していたが、渡航制限が敷かれキャンセルとなり、さらに2020年度に入ってからも状況が改善しなかったため、実地調査及び聞き取りを必要とする調査はほとんど進めることができなかった。それを補うために、インターネット上の法令・資料の収集及びオンライン会議システムを活用したインドネシア法専門家との意見交換、研究報告を行っている。 他方で、地方部での行政官や専門家への聞き取りは、新たに開拓する必要があることに加えて、ネット環境が不十分であること、ネットを通じての調査に消極的な相手が多いことから、オンラインでは行うことが全くできなかった。 日本から関係情報へのアクセス機会が比較的豊富であり、かつ様々な報告書や報道が利用可能である、雇用創出一括法、改正刑法典、および政治的自由に関する諸法令を中心に研究を進めている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、2020年度に進めることのできなかった研究を、オンラインを通じて情報収集できる範囲内で行う。すなわち、(1)中央法令の分析及びマッピング化の作業を日本から情報収集が可能な範囲で行う。(2)また、その進捗に遭わせて、法令制定及び運用にかかわる利害関係者のネットワークを明らかにする研究を行う。 ただし、2020年度に準備作業を行い、2021年度以降に行う予定である地方分権化と地方条例の予備調査についてはすぐに着手できる可能性は低いと考えている。法令のほとんどがインターネット上で入手可能であり、制定過程についても一部利用可能な中央法令とは異なり、地方条例は現地での行政関係者やNGOへの聞き取りと資料提供依頼が不可欠だからである。ただし、 状況が改善され次第、2021年度後半以降に集中して現地調査を行う計画としている。 また、独自の現地調査の計画を変更し、インドネシア現地での若手研究者に調査協力を求めることを検討しているが、これもまず地方の状況をある程度把握しないとならないため、場合によっては研究期間の延長などを検討する必要がある。 当面は、手元資料を活用して(1)及び(2)の研究の一部を着実に進めていくこととしている。また、インドネシア以外のポスト権威主義立憲体制についての比較憲法研究をより詳細に行い、本研究課題の外的妥当性を高めていくことも重要だと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、予定していた現地調査および国際学会参加が実施不可能となった為。
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