研究実績の概要 |
本研究は、日米両最高裁判所による違憲審査制の運用の動態・展開とその背景に関する、研究代表者のこれまでの分析をさらに拡張・発展させることを目的としている。そのために、今年度は具体的に以下のことに取り組んだ。
まず、アメリカの法社会学会の年次大会(Law and Society Association Annual Meeting, Washington, D.C., 2019)において、近年の日本の最高裁判所の違憲審査制と少数意見制の動向について報告を行い、参加者と情報交換・意見交換を行うとともに、司法制度分析に関する諸報告を聞いて、情報収集に努めた。また、研究代表者はアメリカでの在外研究の機会に恵まれたことから、現地にて文献・資料の検討を進めたほか、アメリカ司法・憲法に関するセミナー等への出席や、現地の専門家・市民らとの交流等を通して、アメリカの裁判官制度、司法と法曹集団との関係性、司法と国民との関係性、政治文化のあり方など、連邦最高裁判所をはじめとするアメリカ司法の積極性に関係しているとみられる諸要因や近時の動向などについて、情報収集と考察を行った。これにより、次年度以降に、アメリカ司法の違憲審査制の運用の動態・展開をより多角的に深く分析していく上での蓄積・基盤を厚くすることができた。さらに、帰国後には、日本司法の違憲審査制の運用の動態・展開に関する研究を進めるため、裁判官人事制度と、最高裁判所による憲法判断の背後にある思考様式について、考察を進めた。
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