研究課題/領域番号 |
19K01262
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
見平 典 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (90378513)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 違憲審査制 / 司法政治 / 基礎法学 / 公法学 |
研究実績の概要 |
本研究は、日米両最高裁判所による違憲審査制の運用の動態・展開とその背景に関する、研究代表者のこれまでの分析を、さらに拡張・発展させることを目的としている。そのために、本年度は近時の主要な憲法判例の分析や、昨年度に引き続き裁判官制度の研究を行ったほか、下記の研究に取り組んだ。 (1)日米両最高裁判所の判断過程に関する研究。本年度は、日本の最高裁判所とアメリカ連邦最高裁判所が、違憲審査権の行使にあたり、いかなる要素を考慮に入れているか、経験的な検討を行った。なかでも、判決に対する社会的支持や判決の政治的受容可能性等の、予想される国民・政治部門のリアクションを考慮要素とすることについて、重点的に検討した。具体的には、日米両最高裁判所の重要事件や裁判官の言説等を手掛かりとして、日米両最高裁判所が実態として、こうした要素をいかなる場合に、いかなる程度、いかなる態様で考慮に入れているのか、体系的な分析を行った。そして、その成果の一部を取りまとめ、論文を執筆した。 (2)日本の少数意見制度の歴史的展開に関する研究。本年度は、日本の最高裁判所の少数意見制度の展開について、経験的な検討を行った。少数意見の存在は、後の憲法新判例形成の礎となりうるため、違憲審査制の運用にとって重要な意義を有するところ、日本の最高裁判所の少数意見制の運用は時代とともに変化してきた。本年度は、この変化の背景と含意について分析し、その成果の一部を取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、日米両最高裁判所による違憲審査制の運用の動態・展開とその背景を解明しようとするものであるところ、昨年度には、アメリカ連邦最高裁判所の積極的な違憲審査を支える主因の1つである裁判官選任制度を取り上げ、その実態と影響に関して分析を進め、その成果の一部を論文として公表した。また、本年度には、日米両最高裁判所の憲法判断過程における考慮要素を分析し、両最高裁判所と国民・政治部門との関係の重要な一局面を明らかにした。さらに、少数意見制度をはじめ、違憲審査制の運用に密接に関係する諸制度の考察を進めており、研究は概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、日米両最高裁判所による違憲審査制の運用の動態・展開とその背景について、本年度までに得られた知見を活かしながら、多面的な分析を行いたい。その際、特に、最高裁判所による違憲審査制の運用に密接にかかわる、最高裁判所内外の諸制度とその影響に着目して分析を進めたい。また、それらの成果を踏まえ、必要な制度改善についても考察を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、昨年度と同様、新型コロナウイルス感染症の影響により対面の研究活動が一部制約されたことなどから、当初の見込額と執行額が異なることとなった。次年度には、研究課題遂行上の必要に即しながら、適切に執行していく予定である。
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