研究課題/領域番号 |
19K01268
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
大西 楠・テア 専修大学, 法学部, 准教授 (70451763)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 外国人労働者 / 移民法制 / ドイツ法 / 社会統合 |
研究実績の概要 |
本年度はコロナ禍によりドイツでの現地調査を行うことができなかった。そこで、昨年度に引き続き、文献調査の方法により、2018年成立の移民法(技能労働者移民法)を加味したドイツ移民法制の全体像を明らかにすることを目指した。 本年度において特徴的だったのは、なによりも、コロナ禍の事情を反映して、EU域内でも国境が再導入され、人の移動が大幅に制限されたことである。この根拠となったシェンゲン規則についてはさらなる検討を要する。また、政治的議論としては、看護師などの技能労働者の不足が改めて意識されたこと、食肉工場における集団感染を契機として劣悪な条件のもとで労働に従事するEU域内移民の存在が明らかになり、労働法的規制の強化が意識されたことが特徴的であった。 外国人労働者の社会統合という点では、2019年2月に発足した連邦政府の専門委員会「統合能力(Integrationsfaehigkeit)」の最終報告書が2020年11月に提出された。この報告書は、ドイツが移民国であることを前提とした議論が展開されていること、移民現象の新展開をうけて新たな「統合」理解を打ち出そうとしている点に特徴がある。次年度は引き続き同報告書の「統合」理解についての分析を進める。 研究成果の中間的公表としては、下記の活動を行った。移民現象を原理的に考察するという趣旨のシンポジウム「人・移動・帰属―変容するアイデンティティ」の企画責任者として、シンポジウムの枠内で、労働移動を含めた移民現象の考察を行い、ディスカッションに参加した。また、イギリスのEU離脱に伴うEU域内労働移動の変化について、国際経済学会で研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ドイツでの現地調査が適わなかったため、実態調査という点で研究はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍で現地調査が実施できない状況は本年度も継続する可能性が高いので、現地調査によって得られる知見に頼るのではなく、文献調査やメールやオンラインでドイツの移民法研究者にインタビューを行うことによって得られる知見を集めて研究をすすめる予定である。 本年度は最終年度でもあるので、シンポジウム「人・移動・帰属―変容するアイデンティティ」で受けた研究上のフィードバックから発展させた形で、日本の入管法制および労働移動をめぐる法システムについて研究書をまとめることを視野にいれている。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張を行うことができなかったため、旅費に未使用額が生じた。来年度も海外出張が可能となるか見通しが立たないので、海外出張ができれば格別、できない場合には、未使用額を来年度に予定していた研究のとりまとめ(総括的な研究会の開催や研究書の刊行など)に使用することを計画している。
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