研究課題/領域番号 |
19K01268
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
大西 楠テア 専修大学, 法学部, 教授 (70451763)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 労働移民 / 移民法制 / 自由移動 |
研究実績の概要 |
本年度は、①労働移民をめぐる日独の法制度を総合的に評価するための理論枠組みの構築に注力するとともに、②コロナ禍における出稼ぎ移民労働者が直面した問題を文献研究の手法で調査した。 ①については、労働移民が移住先での市民的・社会的保護へのアクセスを得るためには、入管法上の在留資格(日本)、滞在法上の法的地位(ドイツ)が決定的に重要であることに注目して、出入国管理法制を多角的に検討した。日本においては在留資格制度を中心とした法制度となっているため、在留資格該当性の審査が重要となる。このとき、制度が硬直的に運用されると、たとえば、資格外活動の延長上に転職をして在留資格を変更することが難しくなるなど、労働移民の潜在能力を活かしきれなくなってしまう。 また、在留資格制度の多面的な分析という文脈では、国際経済法の規律領域であるサービス貿易の自由、特に自然人の移動を伴う形態でのサービス提供の自由(GATS第4モード)を検討し、出入国管理政策と通商政策が交錯する状況を明らかにした。この研究の成果は、「Brexit後の移民規制」にまとめた。 ②については、労働移民の中でも移動を消極的に選択せざるを得ず、また、受け入れ先で の適応能力にかける「移動における弱者」について検討した。その研究成果は「コロナ禍と移動の自由-ドイツ法からの考察」において公表した。また、この論文では連邦国家における自由移動との関係を整理するとともに、帰属の複層性についても考察した。すなわち、連邦籍を持っていても、州の国籍を持たないと社会的保護との関係で移動が制限されることもあることを論じ、「連邦における自由移動」が社会の凝集性を高めた歴史的経験に着目して、「移動の自由」がグローバル化時代における社会的連帯を創り出す基礎となりうることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により、当初予定していたドイツでの研究調査を実行することができなかった。しかしながら、ドイツにおける研究調査を補うために、ドイツの外国人法研究者と電子メールを使って意見交換を行い、また、最新の文献情報について案内をうけることができた。また、国内の研究者とのオンラインで研究会を重ねることで、労働移民をめぐる分野横断的・総合的考察が可能になった。現在は、この研究会で得られた研究成果を共著書としてまとめる段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は本研究課題の研究成果を総括する。具体的には、2019年度からの研究活動によって得られた研究者間のネットワーク・研究会を通じた研究の進展を、共著書として公刊する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によりドイツでの研究調査を行うことができなかった。しかしながら、海外研究調査を予定していた調査については、海外研究者とのオンラインでの交流によってある程度達成できた。現在は研究を総括する段階にあるので、次年度使用額は研究書の公刊など研究成果の発表に使用する。
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