研究課題/領域番号 |
19K01269
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
伊藤 知義 中央大学, 法務研究科, 教授 (00151522)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | セルビア / 近代法継受 / 1844年民法典 / ハプスブルク / オーストリア一般民法典 / ボスニア / ハンガリー / 東アジア |
研究実績の概要 |
2022年度においては、前半は9月からの台湾での1年間の在外研究に備えた準備に多くの時間を費やした。3年にわたる新型コロナ流行の影響で、セルビアでの資料収集やセルビア人研究者へのインタビューなどができないうちに、学内手続のためにサバティカル先を決めなければならない時期が到来し、セルビアを長期訪問できる目途が立たないこともあって、セルビアと同じく近代法を継受した非西欧圏すなわち西欧周辺諸国であり、日本にも近くコロナ関係で何か問題が発生した際にも帰国しやすい台湾を訪問先に決めた。 年度後半の台湾到着後は、セルビアおよびボスニアにおける近代法継受の状況を台湾と比較する研究に従事している。セルビア、ボスニアと台湾とは、その歴史的、文化的、地政学的状況が大きく異なっているが、近代法受容に当たって、イギリス、フランスといった西欧法の本流に属するとは言いがたいハプスブルク帝国法の影響を大きく受けたセルビア、ボスニアと、同じく傍流として近代法を継受した日本の影響を大きく受けた台湾法とを比較することは、興味深い成果を生む可能性を有している。台湾法はあくまでもセルビア法、ボスニア法の比較対象としての位置付けを持つものに過ぎないが、この比較からいくつかの共通点と相違点を明らかにしたいと考えている。 台湾大学図書館、國立臺灣図書館、高雄文献研究センターなどの各施設において、台湾統治期の日本語文献を中心に、統治開始から50年にわたる期間内に、台湾が近代法をどのように受け入れたか、統治以前の前近代的法制度をどのように近代法に適合させていったかを検討している。それが、前近代的法制度を有していたセルビアおよびボスニアの状況とどのような共通点・相違点を持っていたかを分析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献調査は着実に進んでおり、日本統治期の日本語の図書や新聞を中心とした資料の収集、分析を行っている。 現在の進捗状況としては、1844年セルビア民法典の150周年、170周年を記念してセルビアのさまざまな研究者がその意義を検討した書籍を解析中である。併せて、ボスニアにおける近代的制度や近代法の導入に大きな役割を果たしたハンガリー人のボスニア総督であるカーライ・ベンヤーミンの業績を追っている。彼やボスニア総督府の政策を台湾総督府の近代法継受政策と比較するためである。
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今後の研究の推進方策 |
手元にあるセルビア語(ボスニア語)、ドイツ語、ハンガリー語の資料に加え、ネット上で入手可能な関連文献(図書、論文)の収集を進めて情報のアップデートに努める。台湾統治期の判例や法曹たちの考え方を載せている『台法月報』を材料に、「先進」近代法国家であった日本が、台湾における近代法受容をどう評価していたかを解明する。また、台湾と同じく、日本によって強制的に近代法を継受させられた朝鮮半島・韓国の状況についても、守備範囲を広げていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症による海外渡航制限のため、セルビア等への出張計画、先方の専門家の招聘計画を実現できなかったのが、主な原因である。2023年度は、制限がほぼなくなったので、これらの計画を実現するよう努める。
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