研究課題/領域番号 |
19K01274
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 弘通 東北大学, 法学研究科, 教授 (70257161)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アメリカ憲法史 / 公定教会制 / 政教分離原則 / 宗教的自由 / マサチューセッツ憲法 / 憲法訴訟 / 立憲主義 / 憲法改正 |
研究実績の概要 |
本研究の究極的目的は、アメリカ型の政教分離体制が、今日の現代的展開に先立ちそもそも近代的に成立したときに、どんな内容を持ち、そこにどんな固有の特徴があるのかを探究することである。近代的成立時のアメリカ型政教分離体制を全体的に把握するには、連邦憲法のみならず各州憲法を検討対象とすることが不可欠である。そのために本研究が歴史研究の対象とするのは、北部の最有力州マサチューセッツが、独立宣言後に制定した1780年憲法で従来の公定教会制を基本的に維持する規定を設けてから、1833年憲法修正でそれを廃止して政教分離体制を実現するまでの経過である。1788年の合衆国憲法の成立後も公定教会制を維持したのは北部4州にとどまったが、その中でいちばん最後まで公定教会制を維持したのがマサチューセッツだった。 本研究の第2年目である本年度は、昨年度に引き続き、マサチューセッツにおける上記歴史経過に関する第二次文献を読み込み、現在の歴史学の歴史水準を得る作業に従事した。その際には常に憲法的観点から問題の所在を探ることを心掛けた点も、昨年度と同様である。1780年憲法の規定を具体化する法律が数次にわたって制定され直しており、そのたびに判例法のありようも大きく変化しているため、時間の経過の節目ごとに慎重な検討を行った。 本研究の成果そのものは、本研究の第3年目以降に公表する計画である。本年度は、憲法学という学問の営みについて、グローバリゼーションとの関係において考察する研究論文を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画上、本研究の第1年目と第2年目は、マサチューセッツにおける1780年から1833年までの宗教公定制の歴史研究を行う先行業績の読み込みに当てている。本年度は、新型コロナウイルス・パンデミックの影響で、人の移動を伴う海外での資料収集や国内での研究会への出席・招聘などは大きく制約された。それだけでなく、パンデミックに対処するための教育・行政上の負担が増大した。このような世界的に普遍的な研究環境の下においてできることを行うという観点からは、本年度の研究は、その作業をそれなりに順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の第3年目は、原史料の分析を進め、その分析結果と第2年目までに得た通説的見解とを批判的に対峙させる研究に従事する。2021年度いっぱいは、本年度に引き続き、新型コロナウイルス・パンデミックの影響によって制約された研究環境下に置かれると想定される。とりわけ海外での資料収集ができないため、検討対象としうる原史料が手持ちのものに限られてしまうが、できることを着実に進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス・パンデミックの影響で、資料収集のための海外出張等が不可能になったことが、次年度使用額の生じた主要因である。2021年度もおそらく海外出張は無理だと予想されるが、2022年度に可能になっていれば遂行したい。
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