本研究の究極的目的は、アメリカ型の政教分離体制が、今日の現代的展開に先立ちそもそも近代的に成立したときに、どんな内容を持ち、そこにどんな固有の特徴があるのかを探究することである。近代的成立時のアメリカ型政教分離体制を全体的に把握するには、連邦憲法のみならず各州憲法を検討対象とすることが不可欠である。そのために本研究が歴史研究の対象とするのは、北部の最有力州マサチューセッツが、独立宣言後に制定した1780年憲法で従来の公定教会制を基本的に維持する規定を設けてから、1833年憲法修正でそれを廃止して政教分離体制を実現するまでの経過である。1788年の合衆国憲法の成立後も公定教会制を維持したのは北部4州にとどまったが、その中でいちばん最後まで公定教会制を維持したのがマサチューセッツだった。 本研究の第4年目=最終年度である本年度は、マサチューセッツにおける上記歴史経過に関する第二次文献を読み込んだ第1・2年目の成果の上に、基本的には第3年目の昨年度と同様に、原史料の検討・分析に従事した。具体的には、昨年度の検討・考察が、1820年に先立つ時期の、1780年憲法の具体化諸法律(1786年法、1800年法、1811年法)とその下での重要判例(1810年判決、1817年判決、1820年判決)を主たる対象としたのに対して、本年度の検討・考察は、1820年の憲法修正提案(1821年に否決)と1833年の憲法修正、及びそれらに関連する諸史料を主たる対象とした。 だが本年度はこれまでに増して研究時間の捻出に苦しみ、検討・考察が不十分なまま終わった。本年度に活字となった成果は、学会の年間研究テーマの企画立案及びその下での春秋の研究総会の企画実行・司会運営を担当したのに応じた、秋季研究総会シンポジウムまとめ(共著)にとどまった。
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