研究課題/領域番号 |
19K01277
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
増井 良啓 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (90199688)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グローバル化 / 国際課税 / 租税条約 / 租税競争 / globalization / international taxation / tax treaty / tax competition |
研究実績の概要 |
租税条約ネットワークの変容を示す重要な素材として,本研究において検討を予定していたBEPS防止措置実施条約について,日本における指導的立場にある専門家をお招きして座談会「変容する租税条約と国内法の重要論点」法の支配193号6-35頁(2019.04)の司会をつとめ,「主要目的テスト」の解釈論上の問題点をOECDモデル租税条約コメンタリーの例を検討素材として用いつつケース・スタディーの形で具体的に討議した。 また,勤務校における国際租税法の授業(2019年4月から7月)において,租税条約ネットワークの変容およびそれを踏まえた税制改正の状況を重点的に講ずることに努力した。その成果は,恒久的施設の定義の改正をはじめとして,宮崎裕子最高裁判所判事との共著『国際租税法(第4版)』(東京大学出版会,2019.12)の改訂に反映された。 さらに,勤務国における演習(2019年9月から1月)において,経済のデジタル化に伴う国際課税ルールの変化について,参加者の皆さんとともに最新文書を会読した。デジタル化への対応は,新たな国際合意ができれば条約ネットワークの変容を不可避とするものであるため,当初の研究計画を拡充する意味でも,今後ますます重要になる可能性がある。 金子宏教授の主催する共同研究会において,「憲法と租税条約」と題する報告を行い(2019年9月),論文を執筆した。また,租税史研究会で「日米租税条約と国会:1954-2004」という報告を行い(2019年12月),その講演録が近く刊行予定である。 なお,かねて発表していた論文につき,論文集の書籍化の機会を得たので,追記を施したうえで改めて公表した(「支店外国税額控除の設計」中里実ほか編『信託課税研究の道標』290-302頁(有斐閣,2019.12))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で記したように,個別領域についての検討を進めていくつかの成果物を公表することができた。また,今期には未公刊ながら,憲法と租税条約の関係についても,関連する文献を収集して,論文の執筆を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い,BEPS防止措置実施条約が租税条約ネットワークに与えている影響を引き続き実証的に検討する。また,新興国の声が国連モデル租税条約12A条にどう反映しているかの検討を始める。これらの課題については,勤務校で演習「租税条約の世界的変容と日本法の対応」を開設し,大学院学生の皆さんと協力して検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた外国出張を体調不良によりキャンセルせざるを得なくなった。来期もコロナウイルスとの関係で当初の外国出張計画がそのままの形では実施できない可能性があるので,その分も,従来から必要であった文献調査のための支出を増やしたい。
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