研究実績の概要 |
本研究は、21世紀初頭から急速に進展している租税条約ネットワークの世界的変容の姿を実証的に明らかにし、その正確な理解を踏まえて日本法の対応のあり方を検討するものです。3年計画の最終年度である本年度には、次の成果を公表しました。 論文としては、「デジタルサービス税と日本」で、日本政府もデジタルサービス税の導入を検討すべきである、という意見に対して批判的に応答しました。また、2021年10月に「BEPS包摂的枠組み」が租税条約の変容にかかわる重要な国際合意を公表した機会をとらえて、ジュリスト誌の特集「国際課税の歴史的な合意―デジタル課税と最低税率をめぐって」に「経緯」を寄稿し、21世紀に入ってからの国際協調の流れを3段階に整理して提示しました。「Japan’s Corporate Income Tax:1995-2021」は、ルール形成過程を回顧したものです。 学会報告としては、国際租税協会香港支部主催のAsia Pacific Tax Conferenceのセミナー「Indirect Transfer Taxes in M&A deals: A Dilemma? 」にパネリストとして参加し、オフショア間接譲渡の課税について意見を述べました。 著書としては、New York University, International Tax ProgramのRosenbloom教授のための記念論文集『Thinker, Teacher, Traveler: Reimagining International Tax』に「HNWIs and Exit Tax in Japan --- Developments in a Digital Age」と題する論文を寄稿しました。また、かつて雑誌に公表した論文「租税条約の締結における国会の関与」が『租税法律主義の総合的検討』に収録されました。
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