研究課題/領域番号 |
19K01281
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
渕 圭吾 神戸大学, 法学研究科, 教授 (90302645)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 理由附記 / 理由付記 / 理由の提示 / 行政手続 |
研究実績の概要 |
研究初年度である2019年度においては、シャウプ勧告によって日本の租税手続がそれまでと比べてどのように変わったのか、またシャウプ勧告が租税手続を超えて行政手続一般にどのような影響を与えたのか、ということについての研究の手始めに、一般に手に入る文献を利用して研究の暫定的な見通しを提示した。具体的には、シャウプ勧告の租税手続法部分の立案を担当したスタンリー・サリー(Stanley S. Surrey)の考え方に焦点を当てて、シャウプ勧告での記述と、彼が1940年ごろに執筆していた論文の中の記述を照らし合わせ、彼がシャウプ勧告でどのようなことを言いたかったのか推測した。具体的には、サリーが、租税争訟の件数をできるだけ減らし、租税行政庁や裁判所が争訟の解決のために過度な労力を割かなくてもよいようにすることを狙っていた、という仮説を得た。そして、この仮説が正しいとすると、シャウプ勧告を基にして成立した青色申告制度における理由附記の仕組みにつき納税者の権利保護(手続的デュープロセス)の考え方によって説明するのは、少なくとも沿革との関係では不正確だ、ということになる。2019年度においては、以上のような内容について論文にまとめ、8月に、アメリカのローレビューに投稿した。学生が編集するローレビューにおいて日米の比較法に関する論文に関心を持ってもらうことは容易ではないが、幸いにして、University of Pennsylvania Asian Law Reviewという雑誌からオファーをもらい、2020年2月に公刊することができた。この論文は、
https://scholarship.law.upenn.edu/alr/vol15/iss2/1/
においてオンラインで読むことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年2月末の時点では、本研究課題については、順調に進捗していると言ってよかった。シャウプ勧告とその執筆者であるスタンリー・サリーの研究との関係について明らかにし、論文を公表することができたからである。また、この論文執筆を通じて、アメリカ合衆国憲法の手続的デュー・プロセスについてより一層幅広く勉強しなくてはならないと認識したところでもあった。もっとも、その後、同年3月から(本報告を執筆している)5月にかけて依然継続しているCOVID-19の世界的流行のため、例えば、スタンリー・サリー関係文書を収めているアメリカの図書館等への出張が困難になりそうではある。しかし、前述の論文を公表できたことをもって、一応、おおむね順調に進展している、との評価にしておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り進めたいところであったが、COVID_19のパンデミックのために、海外出張・国内出張については見直さざるを得ないのではないかと予想している。その場合には、入手可能な資料を用いて、できるだけ当初の計画に近い形で研究を遂行していきたい。また、図書については、紙媒体ではなく電子書籍の携帯も積極的に利用していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
図書費及び旅費として使用したが、とりわけ旅費が意外と低廉だったために残額が生じた。2020年度において、図書資料の購入、旅費等のために、有効に利用したい。
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