研究課題/領域番号 |
19K01284
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
重本 達哉 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (60584042)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 行政代執行 / 行政上の強制執行 / 行政上の義務履行確保 / 費用負担 / 法執行 / ドイツ法 |
研究実績の概要 |
研究2年目である今年度も、昨年度に引き続き、「行政代執行」に関するわが国の基礎的な文献等の収集・分析に加えて、ドイツにおける「代執行」に係る基本文献等の収集・分析に努めた。 その結果、従前得た知見を実証的に再確認するとともに、たとえば、使用済み消火用水の除去義務、親族の埋葬に係る配慮義務、ホテルの火災報知器と消防センターとの信号接続義務、飲用水ネットワークと雨水ネットワークとの厳格な分離義務といった特殊な公法上の代替的作為義務にも立ち入った検討を行いつつ、(1)代執行費用を徴収するためには、少なくとも当該代執行自体が適法であったことが基本法20条3項(行政の法律適合性原則)の観点から必要である一方で、代執行に係る義務者が実際に費用負担義務を負うか否かは関連する基礎処分の取消訴訟における訴えの利益の存否にとってあまり重要でないと解されるようになってきていること、というのも、(2)代執行に係る複数の義務者が解釈上存在する場合であっても対外的には特定の義務者が費用負担義務を原則として全額負担しなければならないと解されているからであるが、元々の義務に優先順位が存在するときには、費用請求の相手方の選択について行政官庁が有する裁量がある程度限定される旨をその判断基準とともに明らかにした判例が存在し、それに関連して一定の議論がなされていること、そして、(3)代執行に従事した公務員の時間給や代執行費用の金利の徴収可能性も(限定的にではあるものの)開かれている法状況が認められること、(4)事務管理費用償還請求権と個別法上の根拠が必要と解されている代執行費用請求権とのドイツ法における関係等についても、それぞれ検討を深めることができた。 いずれもわが国において有益な論点であるだけに、その論点又は議論の存在に接することができただけでも少なからぬ成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
わが国における行政代執行の「費用」に関する研究は必ずしも十分でない状況にあったので、今年度も引き続き、基礎的文献の収集・分析に注力することを元々予定していて、その点に大きな遅れは認められなかったものの、現下の世界情勢により、ドイツにおける関連文献の収集活動には少なからぬ支障が生じているため。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツにおける代執行に係る基本文献の収集は一応進んでいるので、今後は、これを分析し、研究成果として公表する作業をさらに加速させることが必要である。ただし、ドイツ全16州を可能な限り網羅的に分析するという観点からドイツの図書館・文書館等を広範に利用する現地調査が引き続き重要であるものの、現下の社会情勢を踏まえると、本研究の財源の柔軟性に依拠して今後の研究実施計画を見直し、場合によっては、補助事業期間延長申請を行うことも視野に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツにおけるいわゆるロックダウン等の影響を受け、ドイツの図書館・文書館等を広範に利用して行うことを予定していた関連文献の収集・分析作業をほとんど進めることができなかったため。そこで、状況の変化に応じて、可能な限り当初計画通りに使用するように努めるが、場合によっては、補助事業期間延長申請を行うことも視野に入れている。
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