従来、実定憲法上の宗教問題は、憲法規範上の限界線を引いた上で、その内部で宗教的活動の恣意を許容するという思考形式で処理されており、これは一見、宗教の自律性を容認するように見えて、あくまで国家体制の他者としてこれを排除するだけの結果をもたらしてきた。ドイツ憲法学における、教会法学や憲法理論を媒介とした問題の処理は、かの国のキリスト教的伝統に依拠するように見えて、実は、各種宗教の本質を見据えつつ、それとは全く異質の政治憲法との調整点又は妥協点を探るという意味で、非キリスト教国である我が国の憲法問題においても大いに参考になるものと考えられる。
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