研究課題/領域番号 |
19K01287
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
金子 匡良 法政大学, 法学部, 教授 (50462073)
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研究分担者 |
山崎 公士 神奈川大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (80145036)
嘉藤 亮 神奈川大学, 法学部, 教授 (90586570)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 実効的人権救済 / 国連「ビジネスと人権」に関する指導原則 / 国内人権機関 / 行政裁量 / 障害者差別 |
研究実績の概要 |
研究初年度である2019年度は、実効的人権救済に関する理論研究を行い、研究の理論的素地を固めた。 まず、山崎は国連「ビジネスと人権」に関する指導原則における実効的救済と国内人権機関の役割、ならびにSDGsの意義と限界に関する理論研究を行い、その成果を、論文「SDGsの光と影:『誰も置き去りにしない』?」神奈川大学評論92号(2019年)65-74頁にまとめた。次に嘉藤は、人事行政における裁量統制の在り方及び行政手続における理由附記と実効的救済について理論研究を行い、その成果の一端を論文「地方自治にかかわる判例動向研究:君が代起立斉唱拒否による再任用等不合格事件」自治総研2019年7月号(2019年)1-23頁として公表した。最後に金子は、カナダ人権委員会におけるここ20年間の救済制度及び救済手法の改革状況を調査し、その成果を論文「カナダ人権法の改革:2000年以降の法改正を中心に」神奈川法学51巻3号(2019年)49-80頁にまとめるとともに、障害者差別における優生思想の影響に関する理論研究を行い、その成果を第4回障害法学会研究大会(2019年11月16日・田園調布学園大学)において報告した。(同報告の概要は2020年秋に刊行予定の学会紀要『障害法』に掲載される。) また、本プロジェクトとして、2回の研究会を開催した。第1回目の研究会は2019年11月11日に法政大学で行い、川島聡・岡山理科大学准教授をゲストに迎え、「障害者に対する不当な差別的取扱いの類型化」と題して報告を受けた後、質疑及び討議を行った。第2回目は2020年3月12日に法政大学で行い、村元宏行・活水女子大学准教授をゲストに迎え、「教育現場における人権侵害の実態と救済方法」と題して報告を受けた後、質疑と討議を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究計画では、初年度に当たる2019年度を理論研究にあて、2020年度で実地調査を含む制度研究を行うことを予定しているが、2019年度は参加研究者が各自の専門分野及び関心領域に沿って、実効的救済制度に関する理論研究をすすめ、かつその成果を論文及び学会報告の形で公表することができた。この点において研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。 なお、研究計画では、英米法及び大陸法における救済概念の理論研究を行うことになっているが、これについては、そこに特化した研究成果は公表していないものの、英米法と大陸法の救済概念の比較に関する最新の研究書である F.Hofmann et al.(eds.), Law of Remedies:A European Perspective, Intersentia, 2019 等を通じて研究を深めるとともに、その成果の一部は各自の公刊論文等に反映されている。したがって、この点についても、研究計画は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に行った理論研究を受けて、2020年度は実地調査を含む制度研究を行う予定である。山崎はヨーロッパの国内人権機関における救済制度について、嘉藤はアメリカの行政訴訟における救済制度について、金子は日本の自治体の障害者に関する権利救済制度について調査を行い、そこに見られる救済方法、救済組織、救済制度等の特徴と長短所について分析する予定である。 しかし、新型コロナウイルスの蔓延を原因とする海外渡航の困難さや、国内外の混乱状況を勘案すると、この調査を計画通りに行えるかどうか予断を許さない。可能な限り今年度中の調査を実現すべく努力をするつもりであるが、十分な研究成果が見込めない場合は、今年度中の調査を断念し、そのための旅費等に充てる予定であった研究費を次年度に繰り越した上で、来年度に調査を実施することも検討する。仮に調査を延期した場合は、今年度は更なる理論研究と調査の準備にあて、研究計画に遺漏無きことを期す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究経費として申請していた神奈川大学分のノートパソコン購入費が未支出であり、また図書費についても未支出分が発生したため、次年度使用額が生じた。 これらの次年度使用額については、2020年度に研究計画に沿って支出を行うとともに、当該年度に予定している海外及び国内旅費の不足分に充当する予定である。
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