研究課題/領域番号 |
19K01287
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
金子 匡良 法政大学, 法学部, 教授 (50462073)
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研究分担者 |
山崎 公士 神奈川大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (80145036)
嘉藤 亮 神奈川大学, 法学部, 教授 (90586570)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 実効的人権救済 / 人権政策 / 構造的人権侵害 / ヴァルネラビリティ |
研究実績の概要 |
2022年度は、6月と10月に研究会を行い、各自の研究成果をまとめるとともに、窪誠・大阪産業大学教授(国際人権法)、濱田太郎・専修大学教授(国際経済法)、小谷昌子・神奈川大学准教授(医事法)、近江美保・神奈川大学教授(ジェンダー法)、吉村顕真・弘前大学准教授(不法行為法)、鈴木尊紘・国立国会図書館調査員(障害学)、村元宏行・活水女子大学教授(教育法)をゲスト報告者として招いて、それぞれの専門分野における人権救済制度について、司法救済および行政救済の両面から分析した内容を報告してもらった。 それらの研究成果をまとめ、本研究プロジェクトの集大成として、2023年3月に『人権の法構造と救済システム』を法政大学出版局より刊行した。同書では、実効的な人権救済制度論の確立には、①人権侵害の要因(個別的要因と構造的要因)の研究、②人権救済制度の構築・運用に関する研究、③人権侵害の予防のための制度・政策に関する研究、④人権救済制度の根幹を成す原理や思想、ないしはその土台となる人間観・歴史観・社会観に関する研究が必要であるとの枠組みを示し、それぞれの側面から、実効的人権救済制度に必要とされる要素を析出した。 また、同書においては、人権救済制度の実効性を担保するためには、とりわけ構造的人権侵害への対処が重要であり、また単なる法的権利利益の補填だけではなく、人権侵害からの全人格的な「回復」が求められることを主張した。そのためには、人権侵害を受けた当事者の回復力(レジリエンス)を支えるとともに、それを促す「気づき」(当事者の気づき+社会的気づき)を喚起するための制度・政策が不可欠であることを指摘した。加えて、人権救済制度の構築に当たっては、その対象として、傷つきやすくも自律的であろうとする「ヴァルネラブルな人びと」を措定し、そうした人びとを支える制度論の構築が重要であることを摘示した。
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