最終年度は、永住許可、国籍取得について、(国際および国内)人権規範に関する各国の学説・判例・法制度を体系的に比較分析した。また、多文化共生政策に必要な基本法、条例、指針、計画などのあり方を総合的に研究し、それらの法規範と憲法の人権規範および国際人権規範との関係について考察した。そのうえで、国と自治体の実務上の多文化共生政策の役割分担を踏まえて、現実具体的な政策や法制度の提案をした。 とりわけ、単著『国際人権法と憲法:多文化共生時代の人権論』(明石書店)において、憲法人権規範と国際人権法の人権規範との整合的な解釈のあり方を総合的に検討した。また、編著『国際人権法の規範と主体』(信山社)において、各マイノリティの主体別の人権論を整理し、国際人権規範と憲法規範の関係を考察した。 英語論文「HUMAN RIGHTS OF NON-CITIZENS AND NATIONALITY」により、研究成果を国際的に公表することにも留意した。 さらに、愛知県の人権推進プランを策定し、人権条約を踏まえ、外国人に限らず、多様なマイノリティの社会参加を推進するための方策を具体化した。企業への働きかけの施策が弱い日本の現状にあって、ドイツやフランスが「多様性憲章」をいかに策定し、企業に働きかけているかを明らかにする論文を翻訳し、5年間の愛知県の推進プランの中で日本版「多様性憲章」を根付かせることを今後の課題とした。
|