研究課題/領域番号 |
19K01291
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
福嶋 敏明 神戸学院大学, 法学部, 教授 (80461010)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 憲法 / アメリカ憲法 / 信教の自由 / 人権総論 / 文化戦争 |
研究実績の概要 |
2020年度については、まず、2019年度に引き続き、宗教に対する法適用免除をめぐるリベラル派と保守派の対立構図の「変容」に関する分析を進めた。特に2020年度においては、一般法適用免除法理を放棄した1990年のSmith判決に焦点を合わせて、同判決の法廷意見や個別意見の内容について、判決文・訴訟資料などの一次資料や研究書・研究論文などの二次資料に基づき、分析を行うとともに、Smith判決に対する学説における評価の動向について、リベラル派・保守派による評価の「変容」の有無という点を重視しながら、分析を行った。 次に、2019年度に行った学会報告の際の分析によって得た知見をさらに深めるべく、本研究課題の主たる分析対象である2014年のHobby Lobby判決と2018年のMasterpiece Cakeshop判決に対する分析も進めた。特に2020年度においては、後者のMasterpiece Cakeshop判決に焦点を合わせて、同判決の法廷意見や個別意見の内容について、判決文・訴訟資料などの一次資料や研究書・研究論文などの二次資料に基づき、その社会的・文化的背景も踏まえながら、分析を行った。その際、同判決で問題となった信仰を理由とする同性愛カップルに対するサービス拒否という問題は下級審レベルでも判決が下されているため、これら下級審判決の動向についても分析を進めた。 さらに、所属学会(日米法学会)の判例研究会において2019年度に行った国教樹立禁止条項に関する連邦最高裁判所判決(American Legion判決(2019年))についての判例解説を学会誌(アメリカ法2020-1)に公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画に沿って、宗教に対する法適用免除をめぐるリベラル派と保守派の対立構図の「変容」に関する分析をさらに深め、本研究課題の主たる分析対象であるMasterpiece Cakeshop判決に対する本格的な分析にも着手し、一定の研究成果を残すこともできた。しかしながら、当初予期していなかった新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オンライン授業の実施のために予想以上に時間がとられ、本研究課題に費やすことを予定していた時間が減ってしまったは否定できない。加えて、資料・情報収集のためにアメリカの研究機関への出張を行うことを予定していたが、これも断念することとなった。そのため「やや遅れている」との評価をせざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、まず、宗教に対する法適用免除をめぐるリベラル派と保守派の対立構図の「変容」に関する分析として、Smith判決に関する分析に引き続き、同判決後の1993年に制定された「信教の自由回復法」(RFRA)の制定過程に関する分析を行う予定である。また、本研究課題の主たる分析課題である2つの判決の分析として、Masterpiece Cakeshop判決に対する分析を引き続き進めていくとともに、もう1つの判決であるHobby Lobby判決に対する本格的な分析にも着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に資料・情報収集のためにアメリカの研究機関への出張を行うことを予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、これを行うことができず、また、同様の理由から、研究会参加や資料収集のための国内出張を行うこともできなかったため、次年度使用額が生じた。 2020年度に生じた次年度使用額については、新型コロナウイルスの感染状況次第ではあるが、2021年度以降にアメリカの研究機関への出張や研究会参加等のための国内出張を行う際の費用に充てることにしたい。 2021年度の研究費については、まずは図書を含めた資料の収集に充てることを予定している。その上で、やはり新型コロナウイルスの感染状況次第ではあるが、研究会参加等のための国内出張などに充てることにしたい。
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