研究課題/領域番号 |
19K01291
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
福嶋 敏明 神戸学院大学, 法学部, 教授 (80461010)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 憲法 / アメリカ憲法 / 信教の自由 / 人権総論 / 文化戦争 |
研究実績の概要 |
2021年度は、2020年度に引き続き、(1)宗教に対する法適用免除をめぐるリベラル派と保守派の対立構図の「変容」および(2)信教の自由と同性愛者の権利の対立に関わる問題について、関連する判例の判決文・訴訟資料などの一次資料や研究書・研究論文などの二次資料に基づき分析を進めた。特に、2021年6月21日に合衆国最高裁判所が(2)の問題に関する最新の事案について判決(Fulton判決)を下し、その中で、(1)の問題に深く関わる動向として、保守派の裁判官から1990年のSmith判決の見直しを求める個別意見が示されたことから、この2021年の合衆国最高裁判決について、下級審の動向や訴訟資料なども踏まえて詳細に分析を行い、所属研究会(アメリカ憲法研究会)において報告を行った。 また、本研究課題に深く関わる問題状況として、近年アメリカではリベラル派が手厚い保護を求めてきた言論の自由や信教の自由が保守派の「武器」として用いられる傾向が指摘されているが、この傾向について、言論の自由をめぐる動向を中心に、関連する判例や研究書・研究論文などに基づき分析を行い、所属研究会(「ポピュリズム憲法学と立憲主義に関する総合的研究」研究会)において「第一修正の「武器化」をめぐって」と題して報告を行った。 さらに、所属学会(日米法学会)からの依頼に基づき、信教の自由に関する著書(Our Non-Christian Nation)の書評および信教の自由に関する合衆国最高裁判決(Espinoza判決(2020年))の評釈を学会誌(アメリカ法)に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
依然として収束が見通せない新型コロナウイルス感染症をめぐる状況のために、2020年度に引き続き、2021年度においても、資料・情報収集のために予定していたアメリカの研究機関への出張を行うことができなかったものの、本研究課題にとって重要となる判例および問題状況について研究会において報告を行うことができ、さらに関連する著書および判例について研究成果を公表することができたため、順調に進展しているものと評価しうる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究成果を踏まえ、宗教に対する法適用免除をめぐるリベラル派と保守派の対立構図の「変容」および信教の自由と同性愛者の権利の対立に関わる問題について分析する作業を継続するとともに、信教の自由と人工妊娠中絶の権利の対立に関わる問題についての分析に本格的に着手することにしたい。あわせて、2021年度に所属研究会において行った2つの報告の内容を研究論文という形でまとめる作業を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、資料・情報収集のためのアメリカの研究機関への出張および研究会参加・資料収集のための国内出張を行うことを予定していたが、2020年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況により出張を行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。 2021年度に生じた次年度使用額については、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況次第とはなるが、2022年度にアメリカの研究機関への出張や国内出張を行う際の費用に充てることにしたい。 2022年度の研究費については、図書を含めた資料の収集に充てることを予定している。
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