研究課題/領域番号 |
19K01294
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
平川 英子 金沢大学, 法学系, 准教授 (90510371)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フランス租税法 / 所得税 / 納税環境の整備 |
研究実績の概要 |
その面から前年度に実施した文献調査において、個人所得税に関する源泉徴収制度の研究から派生して、近年の税制改正にかかる所得税の改正動向が注目されたことから、引き続きフランス租税法の基礎的研究の一環として、主に所得税をめぐる議論のリサーチを行った。調査の方法は、もっぱら文献調査による。 この間の改正は、マクロン大統領のイニシアティブのもとにあるところ、黄色いベスト運動にみるように、同大統領の税制改革・財政改革には反発も大きい。他方で、納税者サービスの向上という観点からの税務行政過程の整備(税務行政のICT化)も進められており注目される。 また、税制改革の動向との関係で、近年のフランスにおける所得格差をめぐる議論についても研究を行った。比較研究により、OECD諸国においてフランスの格差の状況は、客観的指標からすれば比較的是正されていると評価しうるものであったが、それでもフランス国民(納税者)の政府に対する反感は大きいようである。その一因として、上記のような税制そのものに対する不満(不公平感)があるようであり、政府と国民との間の信頼関係の構築には、客観的な数値だけでなく、税制の在り方そのものから国民が受け取る印象も影響を与えているといえる。レギュレーションの基盤には、租税行政と納税者との信頼関係が重要であるところ、近年の税制改革をめぐる議論は示唆的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度から引き続き派生的な研究として、所得税関係の改正動向、そこから派生して格差をめぐる議論をおった。なお、これに関する論文は当該年度中に発表することができなかったが、2023年度において公表できるよう準備を進めている。また、レギュレーションに関する文献の翻訳を研究ノートとして公表できるよう準備を進めているが、予定よりも遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに収集した文献を中心に、翻訳・研究を進める。必要な文献はすでに収集していると考えているが、研究を進めていくうえで追加的・補足的資料が出てくると思われるので、研究費残額はそうした資料の収集のために使用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で海外出張を延期したものの実施見込みがたたないことから中止することとした。そのため旅費として計画していた予算部分に残額が生じたため、新たな文献を購入したほか、オンラインで入手できる資料の収集と整理、これまでの研究資料の整理のための人件費に使用したが、なお残額が生じた。この次年度使用額については、主に追加的資料、文献の購入・収集の費用にあてる予定である。
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