研究課題/領域番号 |
19K01301
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤坂 幸一 九州大学, 法学研究院, 教授 (90362011)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 議会法 / 専門知 / ガバナンス |
研究実績の概要 |
本研究では、(1)フォーマルな権威を有する公的機関による専門的知識の集積及び決定(government)から、(2)フォーマルな権威をもたないが、ある政策領域において実効的に機能するインフォーマルなものをも含んだ規制メカニズムの総体(governance)へと視野を拡大することの必要性を自覚した上で、(3)そのような動態的知識形成を背景とする秩序形成のネットワーク化に際しては、ネットワーク内の各アクターが自律的性格を持ち、政府を含む他のアクターの完全な統御下には置かれないために、これらのアクターから構成されるネットワークそれ自体も自律的・自治的性格を持つことになるという点に特に留意し、秩序形成の実体的内容のみならず、そのためのフォーラムとなるネットワーク自体について、議会立法者はいかなる範囲・手法で実効的な公的統制を行いうるのか、という独自の視角から、統治機構改革の具体的提言を行うことを目的とする。 そのような観点から、「憲法と憲法学ーー日本政治思想史との対話」、および「日本国憲法の制度的帰結の政治学的分析ーー現代政治学との対話」、ならびに「憲政のアクターとその盛衰ーー政治学との対話」では隣接分野の知見を取り入れながら、インフォーマルな秩序形成のあり方ないし機序について、従来の憲法学とは異なる視角からこれを憲法学の守備範囲に取り込むことを試みた。また、主要な秩序形成の舞台である議会というフォーラムの運用は、このようなネットワークの結節点として重要な意味をもつ。そのような観点から、議会というフォーラムの運用者たる議会官僚の日記に着目しつつ、その具体的なフォーラム運営手法のノウハウの解明を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インフォーマルな秩序形成プロセスを含めた憲政秩序のあり方について、隣接諸科学の知見を取り入れながら、従来の憲法学にはなかった新たな視座を開拓し得た点、また、議会というフォーラムの運用主体について、その『日記』資料を活用した独自の分析視覚を設定することで、秩序形成プロセスの動態的把握に向けた研究基盤の構築を成し得た点に鑑み、上記のように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の検討課題としては、憲政秩序の運用全体を視野に収めつつ、先のようなフォーラムで私的主体が果たす役割や、そのような私的主体が果たす機能を公的主体がいかに統御するのか、すなわちガバナンスという視座について、理論的に検討することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外ヒアリング調査および海外における文献研究がコロナ禍により遂行が困難な状況になったため、いったん、書籍取り寄せによる理論面の研究を先行させたため。2021年度においては、感染状況の推移を見極めつつ、適切な段階でヒアリング調査や保管的な文献収集を実施する予定である。
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