研究課題/領域番号 |
19K01307
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
倉田 原志 立命館大学, 法学部, 教授 (10263352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 憲法価値 / 労働法 / 規範的効力 / ドイツ |
研究実績の概要 |
研究全体としては、立憲主義国においては、憲法が最高法規であり、法律は、憲法に反することができないだけではなく、憲法を具体化する役割を負い、法律が実際にどうなっているかは、憲法がどのように規範的効力を発揮しているかという問題でもあるので、法律のなかで労働法に焦点をあて、この問題について、ドイツでの議論を素材として検討するものである。具体的には、労働法の基本理念は憲法のどこに求められるか、人権の労働関係における効力、労働法の規制緩和に憲法上の限界はあるかについてを中心として、ドイツでの議論を追い、日本との比較を試みる。 2021年度には、連邦憲法裁判所と連邦労働裁判所との関係について、連邦憲法裁判所が専門裁判所である連邦労働裁判所の判決に対してどの程度審査できるか、実際にどのような判決をしているのかを検討することとし、2020年度に、2009年以降の両裁判所の判決について検討し、論文を執筆したので、2021年度には、特に、両裁判所の設立にさかのぼって、判決およびその背景となっている理論の異同を検討することとしていたので、「ドイツにおける連邦労働裁判所と連邦憲法裁判所-1954年~1978年の議論を中心に-」という論文を執筆した。この論文では、連邦労働裁判所が創立されてからの25年間すなわち1978年までの、連邦労働裁判所と連邦憲法裁判所の関係を探るべく、当時の連邦労働裁判所長官ミュラーの論文と、当時の連邦憲法裁判所長官ベンダの論文(講演)を基本として、社会国家原則、基本権の第三者効力に関する相互のやりとりを中心に検討した。この時期にも連邦憲法裁判所が連邦労働裁判所の判断を覆したものは少なく、連邦労働裁判所と連邦憲法裁判所の基本的な一致、社会国家原則と基本権を対立したものととらえる必要はないとする点での一致や、基本権の第三者効力についても一定の歩み寄りともいえる状況がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、連邦労働裁判所と連邦憲法裁判所の関係については、おおむね検討できたといえるが、2019年度・2020年度の課題の検討が一部残されているため。 具体的には、2019年度には、①労働法の基本理念はドイツ基本法のどこに求められるかについても検討することになっていたが、ドイツでは、EU法との関連でも、基本権の私人間での効力についての議論が多くなされている状況にかんがみ、②基本法の保障する基本権の労働関係における効力について、これまですすめてきた研究を特にEU法を考慮に入れて補足・補充すること、特に、EU法に関連する議論の検討を先行させたことから、①については検討できず、2020年度・2021年度も、①については検討できなかった。 2020年度には、③労働法の規制緩和に憲法上の限界があるか、あるとすればそれはどこから導かれ、どのような限界かについて、ドイツにおける客観的理由のない有期契約の制限について検討し論文を執筆することができたが、立法者による規制緩和が違憲かどうかを裁判所がどのように判断するべきかについての議論の検討については課題が残った。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、これまで検討できなかった、①労働法の基本理念はドイツ基本法のどこに求められるか、③労働法の規制緩和の憲法上の限界があるかに関して、立法者による規制緩和が違憲かどうかを裁判所がどのように判断するべきか、を検討し、ドイツにおいて最近でも議論が続いている②基本法の保障する基本権の労働関係における効力についても、その状況を追うこととしたい。具体的には以下のとおり。 ①については、ドイツ基本法には、生存権のような社会権の規定はないので、社会国家原則(20条)あるいは人間の尊厳(1条)が、労働法の基本理念の根拠として考えられる。そのそれぞれが多くの内容を含みうる規定であるので、学説の理解を中心として、それらの概要を把握するとともに、連邦憲法裁判所や連邦労働裁判所の判決の中でそれらがどのように把握されているかを明らかにすることにしたい。 ③については、規制緩和を基本権保護義務で限界づけることが考えられ、2020年度の検討のなかで、裁判所は、比例原則に親和性がある枠組みで審査すべきとする見解、比例原則とは異なる独自の枠組みが必要だとする見解などがあることが明らかになったので、これらの学説と、連邦憲法裁判所の判断が示されているものを検討することとしたい。 ②の基本法の保障する基本権の労働関係における効力については、これまですすめてきた研究を特にEU法を考慮に入れて補足・補充する。その際、近年、直接的効力説に基づいて判断したという評価がなされている連邦憲法裁判所の判決がいくつか出されているので、それらをめぐる議論を検討するとともに、これまでの連邦憲法裁判所の立場とされているリュート判決で示された立場と連邦労働裁判所や連邦労働裁判所長官であったニッパーダイの見解との関係についても、さらに検討することとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度には、コロナ禍の影響で旅費が執行できなかったこと、資料整理等のために人の雇用をしなかったことによる。 資料収集およびインタビューのため、状況をみつつ、ドイツに行くための旅費を使用することを追求する。また、ドイツ語の関連書籍を計画的に購入し、資料整理等のために謝金等も使用する。
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