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2021 年度 実施状況報告書

税務行政の国際化と情報通信技術の利用と納税者権利保護の新たな展開

研究課題

研究課題/領域番号 19K01308
研究機関立命館大学

研究代表者

望月 爾  立命館大学, 法学部, 教授 (60388080)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード税務行政のデジタル・トランスフォーメーション / デジタル課税 / 納税者のプライバシー保護 / 税務行政へのAI利用規制 / 電子インボイス / 適格請求書等保存方式の導入 / 納税者権利保護 / 納税環境整備
研究実績の概要

(1)各国の納税者保護法制や納税者権利憲章の最新動向の調査・報告
2021年5月27日、28日の第5回納税者の権利に関する国際会議(5th International Conference on Taxpayer Rights)にオンラインで出席し、テーマである「税務調査における納税者の権利保護」について調査を行い、その成果を2021年8月29日にオンラインで開催された租税訴訟学会令和3年度研修・研究大会において報告した。また、2021年10月5日から8日に「途上国における納税者権利保護」をテーマに開催された第6回納税者の権利に関する国際会議にオンラインで出席して、アジア・アフリカや南米諸国などの途上国の納税者の権利保護の現状について調査を行った。
(2)国際的なデジタル課税の問題と税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX)
OECDで議論が進み2021年10月に最終合意に達した国際的なデジタル企業への新たな課税ルールや最低法人税率の設定によるミニマム・タックスの導入などについて調査を行い論文にまとめ公表した。税務行政のデジタル・トランスフォーメーションについては、2021年6月に国税庁が公表した同名の報告書やEUの付加価値税における電子インボイスの導入の状況について調査を行った。そのうえで、日本の消費税に2023年10月から導入される適格請求書等保存方式の電子インボイスの準備の進捗状況の調査や課題整理を行った。また、電子帳簿保存法の改正など進みつつある納税者側の税務のデジタル化の現状と課題なども含め、納税者のデータやプライバシーの保護と税務行政へのAIの利用の規制などの最新の状況を調査した。それらの成果を日本公認会計士協会と経済産業省共催シンポジウムの基調講演「税務におけるDX化と企業の対応」やパネルディスカッション、東京地方税理士会の研修会などで報告発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

(1)税務行政のデジタル化と納税者権利保護の現状の調査・報告
2021年度も新型コロナウィルス感染症の流行ため、計画していた海外調査を行うことができなかったが、Center for Taxpayer RightsやIBFDなど関連の研究機関や団体の主催するオンラインセミナーや研究会に参加し資料や情報の収集を行った。また、各国の税務当局やOECDやEUなどの国際機関、国際的会計事務所のBig4などのウェブ情報を活用しながら、各国の税務行政のデジタル化の最新の状況とその納税者の権利保護上の問題点を調査することができた。とくに、2021年度の調査ではEUの付加価値税(VAT)の電子インボイスの導入の状況とその義務化の動きや電子インボイスの情報とその他の税務情報の照合による電子調査(e-audit)の実態などを知ることができた。さらに、日本の税務行政のデジタル・トランスフォーメーションの動きについても、最近の行政全体のデジタル化の動向や企業納税者の対応の状況なども含めて調査を行った。それらの研究成果の報告や講演を、租税訴訟学会の研究・研修大会、東京地方税理士会や日本公認会計士協会租税調査会の専門委員会などにおいて報告した。
(2) 国際的デジタル課税の問題の議論状況と税務行政の国際化の調査・報告
2021年10月にOECDで最終合意に達した国際的デジタル課税の問題とそれに伴う国際課税のルールの見直しについて情報を収集した。加えて、国際的税務行政の協力の現状と納税者への影響について、海外文献やウェブ情報を収集し調査を進め、その現状と課題を整理した。
以上のように本研究課題については、計画に基づき研究を進めてきたが、ウェブ情報や文献資料による調査には限界がある。今後新型コロナウィルスの感染状況に留意しながら、海外調査を実施する必要があり、その意味ではやや遅れているものと評価できる。

今後の研究の推進方策

(1)各国の納税者保護法制や納税者権利憲章の最新動向の調査・報告
これまでは、税務調査や納税者情報・データの収集手続を中心に納税者権利保護の研究を進めてきたが、研究の対象を徴収手続に広げ、2022年度は2022年5月18日から20日にアメリカのハーバード大学で開催される第7回納税者の権利に関する国際会議(7th International Conference on Taxpayer Rights) にオンラインで出席し、テーマである「ポストコロナ世界における租税の徴収と納税者の権利」について調査を行い論文等を執筆公表する計画である。また、従来から交流のあるアジアの研究者や実務家に協力してもらい、海外渡航が可能となれば現地での調査を行う準備を進めている。今のところの調査先としては、近年納税者権利保護法が制定・施行された台湾を予定している。
(2)税務行政のデジタル化及び国際化と納税者権利保護の総括と追加調査
3年間調査を進めてきた税務行政のデジタル化及び国際化と納税者権利保護の研究について総括し、その現状と今後の課題について再検討する。また、国内外で進みつつあるデジタルトランス・フォーメーションの税務行政や納税者への影響について、最新の状況を調査する予定である。とくに、2023年10月に導入が予定されている消費税の適格請求書等保存(インボイス)方式と電子インボイスや同年から本格的に適用される改正電子帳簿保存法の影響について、実務家団体とのつながりを活かして税理士や公認会計士などの実務家や企業や個人事業主へのヒアリング調査を行う。そのうえで、本研究全体の総括として、上記(1)の研究成果もふまえ、税務行政のデジタル化や国際化と納税者権利保護の現状と課題を明らかにし、その「あるべき姿」を立法や税務行政のグッド・プラクティスのモデルとして論文にまとめる計画である。

次年度使用額が生じた理由

2021年度も前年度に引き続き新型コロナウィルス感染症の流行のため、計画していた海外調査を実施することができなかったことから旅費の執行ができず、次年度使用額が生じることになった。そこで、2022年度は新型コロナウィルスの感染状況に注意しながら、海外調査を実施し、その旅費等で残額を使用する計画である。なお、調査先としては近年納税者権利保護法が制定・施行された台湾を予定して準備を進めている。
また、2022年5月18日から20日に開催される第7回納税者の権利に関する国際会議(7th International Conference on Taxpayer Rights)などオンラインによる国際会議や研究会への出席の準備費用や参加登録料などの費用に充てたい。そのほか、一部は海外文献や資料の購入費用としても使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 小規模宅地等の特例の「生計を一にしていた」の意義 [東京高裁令和3.9.8判決]2022

    • 著者名/発表者名
      望月爾
    • 雑誌名

      税務QA

      巻: (241) ページ: 50-53

  • [雑誌論文] 書評 諸富徹『グローバル・タックス : 国境を超える課税権力』岩波書店,2020年2021

    • 著者名/発表者名
      望月爾
    • 雑誌名

      財政と公共政策

      巻: 43(1) ページ: 70-73

  • [雑誌論文] 酒井報告に対するコメント (消費課税の将来構想)2021

    • 著者名/発表者名
      望月爾
    • 雑誌名

      租税法研究

      巻: (49) ページ: 37-40

  • [雑誌論文] 内国法人の非居住者からの借入れに対する過少資本税制の適用[東京地裁令和2.9.3判決]2021

    • 著者名/発表者名
      望月爾
    • 雑誌名

      税務QA

      巻: (235) ページ: 47-51

  • [雑誌論文] 国際的デジタル企業課税と各国のデジタル企業課税の動向ーOECDにおける「2つの柱」に関する議論を中心にー2021

    • 著者名/発表者名
      望月爾
    • 雑誌名

      租税理論研究叢書31 企業課税をめぐる内外の諸課題

      巻: (31) ページ: 23-48

  • [学会発表] 納税者権利憲章と税務調査2021

    • 著者名/発表者名
      望月爾
    • 学会等名
      租税訴訟学会

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公開日: 2022-12-28  

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