研究課題/領域番号 |
19K01308
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
望月 爾 立命館大学, 法学部, 教授 (60388080)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 税務行政のデジタル・トランスフォーメーション / 納税者権利憲章の国際モデル / 納税者のデータ保護 / 納税者のプライバシー / 適格請求書等保存方式の導入 / デジタル・インボイス |
研究実績の概要 |
(1)各国の納税者保護法制や納税者権利憲章の最新動向の調査 2023年度は、まず同年5月24日から26日にチリのサンチャゴで開催された第8回納税者の権利に関する国際会議(8th International Conference on Taxpayer Rights) にオンラインで出席した。テーマは納税者の権利に関する司法審査やADR(裁判外紛争処理)についてであり、アメリカやホスト国のチリをはじめ各国の納税者の権利と税務訴訟やADRに関する情報を収集した。また、INTERNATIONAL LAW ASSOCIATIONの研究グループの公表した納税者権利保護の最低基準としての新たな納税者権利憲章の国際モデルについて調査を行い、同モデルの翻訳に取り組んだ。 (2)納税者権利保護の研究の総括と翻訳書の出版 これまで研究を進めてきた税務行政のデジタル化・国際化と納税者権利保護の研究についての総括として、租税理論研究叢書33号『人権と税制・税務行政』に研究論文として「納税者の権利保護の国際的進展ー近年の各国の動向と国際的議論の紹介を中心にー」を執筆した。また、オーストラリアのダンカン・ベントレー教授の納税者権利保護法の国際モデルについて、中村芳昭青山学院大学名誉教授をリーダーとするベントレー教授の著作の翻訳プロジェクトに参加し、第4章の「納税者の権利の文脈と分類」と第9章の「納税者の権利モデル」の翻訳を担当し、2023年10月に翻訳書として『納税者の権利-理論・実務・モデル』を勁草書房から出版した。さらに、同月に導入された消費税の適格請求書等保存(インボイス)方式とそれによって利用の拡大が予想されるデジタル・インボイスについて調査研究を進め、その現状と問題点について、雑誌「経済」への論文の執筆や東京地方税理士会や千葉県税理士会松戸支部などで講演や研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)税務行政のデジタル化と納税者権利保護の現状の調査・報告 2023年度も、関連の国際的な研究機関や団体の主催するオンラインセミナーや研究会に参加し資料や情報の収集を行った。また、OECDやEUなどの国際機関、IBFDやIFAなどの国際的研究機関、国際的会計事務所のBig4、各国の税務当局などの資料やウェブ情報を活用しながら、各国の税務行政のデジタル・トランスフォーメーションの最新の状況とその納税者の権利保護上の問題点を調査することができた。また、これまで調査してきた納税者の権利保護をめぐる各国の状況や納税者権利憲章の国際モデルの総括として論文の執筆公表や翻訳書を出版した。さらに、10月に導入された消費税の適格請求書保存(インボイス)方式やデジタル・インボイスについて、昨年度に引き続き調査研究を進め、論文の執筆や研究会での報告や実務家団体での講演を行った。 (2) 税務行政の国際化の調査・報告 税務行政の国際的協力の現状と納税者への影響について、OECDの税務行政フォーラムの動きを中心に調査を進め、その現状と課題を整理した。また、新たにOECDとは別に国連を中心とする国際課税のルールの見直しの動向について調査を行った。 以上のように本研究課題については、研究計画に基づき調査を進めてきたが、本年度も計画していた海外調査を実施することができなかったことから、その意味ではやや遅れているものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)税務行政のデジタル化と納税者権利保護の最新動向の追加調査・報告 2024年6月4日から6日にベルギーのアントワープ大学で開催される第9回納税者の権利に関する国際会議(9th International Conference on Taxpayer Rights)にオンラインで出席する。同会議の主題である「デジタル納税者権利憲章に向けて」は、本研究の税務行政のデジタル化と納税者の権利保護というテーマと一致しており、税務行政のデジタル化と納税者への影響とその権利保護の現状と課題について追加調査を行い、最新情報を収集する計画である。また、昨年度から準備を進めてきた台湾の税務行政のデジタル化や納税者権利保護法のへの現地調査について、研究交流先の国立台湾大学の柯格鐘教授に協力をいただきながら実施し、研究を進める予定である。 (2)税務行政のデジタル化・国際化と納税者権利保護の最終まとめ これまで5年間調査を進めてきた税務行政のデジタル化・国際化と納税者権利保護の研究について総括し、その現状と今後の課題について再検討する。また、EUや中米などで進みつつあるデジタル・インボイスの義務化や税務行政へのAI利用など税務行政のデジタル化の新たな問題についても追加調査を行い、研究を進める計画である。そのうえで、本研究全体の総括として、税務行政のデジタル化や国際化と納税者権利保護の現状と課題を明らかにし、税務行政のデジタル化・グローバル化の進展する中での納税者権利保護の「あるべき姿」について論文にまとめ公表する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度も計画していた海外調査を実施することができなかったことから旅費の執行ができず、次年度使用額が生じることになった。そこで、2024年度は準備を進めてきた台湾への海外調査を実施し、その旅費等で残額を使用する計画である。また、2024年6月4日から6日にベルギーのアントワープ大学で開催される第9回納税者の権利に関する国際会議(9th International Conference on Taxpayer Rights)などオンラインによる国際会議や国内外の学会・研究会などへの出席費用や参加登録料などの費用に充てたい。そのほか、残額があれば一部は海外文献や資料の購入費用としても使用する計画である。
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