研究課題/領域番号 |
19K01310
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
小林 友彦 小樽商科大学, 商学部, 教授 (20378508)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 迂回防止 / 原産地規則 / アンチダンピング / WTO |
研究実績の概要 |
アンチダンピング(AD)に対する国際的規律と原産地規則(ROO)に対する国際的規律との間の規範的懸隔について、実証・理論分析の欠缺を埋めるという観点から基礎的分析を行い、その成果を公表した。 申請書にも記載した通り、AD措置は、個々の不公正貿易に対抗する特殊関税として個別性を本質とする。他方で、ROOは、日常的に通関業務で適用される予測可能な規則として一般性を本質とする。しかし、近年、AD「迂回防止」措置の取扱いをめぐって、ADとROOの緊張関係が顕在化している。特に問題となるのは、産品の原産国を人為的に操作することでAD措置の適用を免れようとする「迂回」行為の取扱いである。AD措置を発動しても、生産ラインや部品を変更する等の軽微な操作でもって容易にその適用を免れることができることとなれば、その効果は大きく損なわれる。そのため、米国やEUは、迂回行為を抑止するために、当初設定した範囲外の行為にまで既存AD措置を拡大適用するという「迂回防止」措置を正当だと主張する。 特に米国は、近年、迂回調査を行うための特別のROOを作って適用し始めた。その理由は、一般的なROOを用いれば、「迂回防止」措置をさらに迂回するような生産ラインや貿易経路が利用される恐れがあるからだという。このようなROOを採用するか否かは、各国のADとROOの制度設計に依存する。しかし、仮に各国国内法上は合法でも、それが区々であれば、国際貿易を阻害する。のみならず、ADとROOそれぞれの分野における国際規律の実効性を損なう恐れもある。ではWTOで対応できるかと言えば、その実効性には疑問符が付く。このような多元的・多段階的な制度間調整を行うための選択肢を示すことが、本研究の問題意識である。 この点、2019年度は、法令・判例の蓄積において先行する米国における法令の解釈・適用の内的一貫性を評価・分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、不測の事態による研究の停滞といった事態は生じなかったため、予定通り研究を進めることが可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に基づき、事例・判例の先行する米国についての研究を、他のWTO加盟国における実行と比較検討する作業を進める。ただし、新型コロナウイルスの影響を受け、対面インタビュー等の調査形式をオンライン・書面によるものに変更する等、所要の対応を行う。
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