研究課題/領域番号 |
19K01312
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 肇志 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 教授 (90292747)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 武力行使禁止原則 / 武力不行使原則 / 国際連合憲章 / 国連憲章 / 集団安全保障体制 / 自衛権 / 不戦条約 |
研究実績の概要 |
本研究の1年目である2019年度は、学説の検討を中心に行った。具体的には、「本研究で明らかにしたい問い」との関係から、各論者が、武力行使禁止原則とその例外との関係をどのように理解しているかに着目した。すなわち、厳格な禁止と明確な例外として捉えているか、当該禁止は必ずしも厳格なものではない(一定の曖昧性がある)と捉えているか、あるいは新たな例外が認められうると理解しているか、といった点である。各論者の立場はこれらの点で多様であり、またその背景にある前提を明らかにした。 こうした作業を踏まえた上で、本分野に関する近年の代表的な文献の1つである松井芳郎『武力行使禁止原則の歴史と現状』(日本評論社・2018)について、学会誌より書評を書く機会をいただいたので、それを精緻に分析した上で、学説史および近年の諸文献との関係における位置づけを明らかにした。その成果は、2020年度に入り、『国際法外交雑誌』および『Japanese Yearbook of International Law』に掲載される予定である。 こうした国際法学説以外に、国際関係論学説にも目を配った。具体的には、帶屋俊輔『国際連盟』(東京大学出版会・2019)や牧野雅彦『不戦条約』(東京大学出版会・2020)などである。とりわけ前者における、国際連盟における戦争違法化の成果物(条約および条約案)と、その外における成果物である不戦条約との位置づけの違いの指摘は、国際法学説においてはしばしば見落とされがちであるが、重要である。 こうした作業を通して、今後の一次資料等の分析の視点を、かなりの程度明確にすることができた。 またこれと並行して、坂元茂樹他『防衛実務国際法』(弘文堂・2020予定)において、武力行使禁止原則に関する章を執筆し、同原則に関する近年の議論全体を概観することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究1年目の2019年度は学説の整理を行う予定であったが、作業としてはそれを進めることができた。そうした学説の1つについて書評を執筆することもできた。こうした作業を通して、今後の一次資料等の分析の視点を、かなりの程度明確にすることができた。 また、これと並行して、坂元茂樹他『防衛実務国際法』(弘文堂・2020予定)において、武力行使禁止原則に関する章を執筆し、同原則に関する近年の議論全体を概観することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの学説の検討も継続しつつ、一次資料等の検討も進めたい。具体的には、武力行使禁止原則に関する自己解釈権の問題(同原則、とりわけその例外と位置づけられる自衛権の行使が主張される場合に誰が判断する権限を有するかという問題)を念頭に、国際連盟における戦争違法化の成果物(条約および条約案)と、その外における成果物である不戦条約との位置づけの違いの指摘を踏まえて、まずは当時の議論・認識を整理したい。そのことは、国連憲章における武力行使禁止原則とその例外の位置づけを検討する際の視点を提供することになると考えられる。
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