研究課題/領域番号 |
19K01316
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
種村 佑介 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (80632851)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 国際私法 / 国際知的財産法 / ビッグデータ / 第四次産業革命 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第四次産業革命等の急速な変化により、情報社会において新たに保護すべき価値を生じるに至った種々の「法益」(権利よりも広い概念を想定している)の保護に関し、日本のみならず、韓国や中国といった東アジア諸国からみても妥当する、財産法分野の国際私法ルールの定立を目指すことにある。 2019年度は、国際知的財産法の研究に軸足を置きつつ、国際法学会の分科会において報告を行った(種村佑介「知的財産分野における条約の機能と課題」国際法学会2019年度〔第122年次〕研究大会〔静岡県コンベンションアーツセンター・グランシップ、2019年9月2~4日〕)。また、自身が世話人となり、韓国次世代コンテンツ財産学会に所属する研究者や実務家を招き、日本の実務家をも交えて、実質法分野の比較を主たるテーマとする国際シンポジウムを開催した(早稲田大学比較法研究所主催シンポジウム「第四次産業革命への法制度的対応」〔早稲田大学、2019年9月21日〕)。そして、これらの研究活動により得られた知見を反映させつつ進めた国際私法理論研究の成果として、本課題に関する判例評釈(種村佑介「渉外判例研究(Number 678)並行輸入品の広告行為につき商標権侵害の違法性を欠くとした事例[知財高裁平成30.2.7判決]」ジュリスト1539号137-140頁)および研究論文(種村佑介「知的財産権侵害の国際裁判管轄権に関する連合王国最高裁Lucasfilm事件判決:審理可能性の判断を中心に」早稲田法学95巻3号〔2020年〕95-118頁)を公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度は、国際法学会において報告の機会を得たため、知的財産分野の国際条約についての知見を深められた。また、韓国次世代コンテンツ財産学会との研究交流について、当初の研究計画では比較的小規模のワークショップ形式での開催を予定していたが、調整の結果、先方の協力と予算面での目処がつき、国際シンポジウムとして開催することができたことは当初の計画を上回る成果であったと考えている。 以上の研究活動を通じてより広範な知見を獲得できただけでなく、それに伴う研究成果も判例評釈や研究論文の形で順調に公開できている。これらのことから、本研究課題は当初の計画以上に進展しているものと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度においては、サイバー・スペースとリアル・ワールドとの接点にかかわる問題として、遠隔操作の自動運転車両の開発や環境整備に力を入れている韓国テグ(大邱)広域市の事情などを同市議会議員の協力を得て訪問調査をする予定であった。しかし、昨今の新型コロナウィルス感染症の影響拡大により、現時点で受け入れが可能であるかの見通しは立っていない。 これについては、訪問調査に代えてメールや遠隔会議システム等によるインタビューなどが可能かどうか、引き続き検討を試みる。 このような事情もあり、2020年度は主として前年度の比較研究で得たたくさんの知見を整理し、国際私法理論研究をさらに深めることに軸足を置きたいと考えている。また、その成果を国内の研究会で中間発表し、フィードバックを得るつもりである。
|