本研究の目的は、第四次産業革命等の急速な変化により、情報社会において新たに保護すべき価値を生じるに至った種々の「法益」(権利よりも広い概念を想定している)の保護に関し、日本のみならず、韓国や中国といった東アジア諸国からみても妥当する、財産法分野の国際私法ルールの定立を目指すことにある。 2021年度は、2019年度および2020年度における研究の集大成として、韓国や中国の国際私法・知的財産法分野の研究者らを招き、日本の研究者や実務家らを交えて、国際財産法をテーマとする国際シンポジウムを開催した(早稲田大学比較法研究所共催シンポジウム「国際私法と財産」〔早稲田大学およびオンライン、2021年9月18日〕)。このシンポジウムの講演記録の一部は、『比較法学』誌上に公表済みである(「[講演]日中韓共同研究シンポジウム『国際私法と財産』」比較法学55巻3号83-110頁)。また、自身が世話人となり、韓国の研究者も交えた研究会を定期的に開催した(早稲田大学比較法研究所共同研究会〔早稲田大学およびオンライン、2021年4月21日、5月19日、11月17日、12月15日、2022年1月19日〕)。さらに、これらの研究活動から得られた知見にもとづく研究成果として、論文1本(種村佑介「知的財産分野における実質法の統一と国際私法の統一」早稲田法学97巻3号掲載予定)、判例評釈2本(種村佑介「渉外判例研究(Number 697)米国前訴に対抗する消極的確認訴訟の国際裁判管轄を否定した事例[大阪地裁令和3.1.21判決]」ジュリスト1564号139-142頁、種村佑介「34 不法行為(1)--投資に関する虚偽説明[東京高裁平成30.1.16判決]」道垣内正人=中西康編『国際私法判例百選[第3版]』(有斐閣、2021年)70-71頁)を公表したほか、学生・一般向けの解説記事や教科書も執筆・分担執筆した。
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