研究課題/領域番号 |
19K01318
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
北村 泰三 中央大学, 法務研究科, 教授 (30153133)
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研究分担者 |
中坂 恵美子 中央大学, 文学部, 教授 (20284127)
建石 真公子 法政大学, 法学部, 教授 (20308795)
安藤 由香里 大阪大学, 国際公共政策研究科, 招へい准教授 (20608533)
西海 眞樹 中央大学, 法学部, 教授 (50180576)
谷口 洋幸 金沢大学, GS教育系, 准教授 (90468843)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 難民条約 / 難民 / 国際人権法 / 入管法 / ノンルフールマン原則 / ヨーロッパ人権条約 / 難民に関するグローバルコンパクト |
研究実績の概要 |
2019年度は初年度であるので、手始めとして6月15日に駒井知絵、高橋済弁護士を呼んで、「最近の難民訴訟と司法審査の課題」をテーマに共同研究会を開催して、我が国の難民受入法法制に関する問題点を考える機会とした。 続いて、6月27日から29日の間、スロベニアで開催された国際法協会(International Law Association)のヨーロッパ地域会合に北村と安藤が参加した。会議のテーマは、「移民と国際規制(Migration/International Regulation)であり、移民及び難民の国境を越えた移動に伴う国際法上の課題に関する種々の有意義な報告に接することができた。 また、12月には、カナダからヒラリー・エバンス・カメロン准教授を招へいして、講演会を催した。同時期にUNHCRと日本弁護士連合会の共催による難民法に関するセミナーにおいてもカメロン准教授を招いてセミナーを開催した。カナダと比べて我が国の難民認定基準が非常に制限的であるのは、なぜなのかという問題を考えるには良い機会であった。我が国における難民法の解釈、適用上の課題を考える機会となった。 『法律時報』(Vol.92-2)は「小特集・国際人権法から入管収容を考える」が組まれた。その中で、北村が「入管収容における法の支配と国際人権法」と安藤が「国際人権条約における入管収容とノン・ルフルマン原則」を寄稿した。この特集は、法務省が入管・送還法制について専門部会を設けて検討を行ってることを考慮して、我が国が直面する課題に関する分析を行う趣旨で企画されたものである。2020年2月には、コスタリカのサンホセで開催された国際移民難民法裁判会議の年次総会に北村と安藤が出席することができた。安藤は、本会議中に我が国におけるノン・ルフールマン原則の適用に関する現状と課題について報告を行う機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は既に北村は、論文として「難民認定における良心的兵役拒否をめぐる問題-国際人権法を参照した『迫害』要件の解釈について-」を脱稿したところである(薬師寺、坂元両教授古希記念論文集に登載予定)。 他の分担研究者による、研究の進捗状況は別途、本報告において記載している通りである。 目下、我が国では入管法の改正が議論されており、特に、入管収容および送還問題に関する専門家会議の提言が今年の6月に公表されたところである。同提言では、退去強制を免れるために、難民申請を繰り返している外国人の送還を円滑化し、送還拒否罪の導入を構想している。しかし、提言は、難民認定の間口は厳しくしたままで、難民として認定されなかった者の退去強制を円滑に進めようとする内容であり、結局、排除の論理を合理化しようとするものとの懸念を払拭することができないと思われる。国連の難民グローバルコンパクトの趣旨からみても、同提言の内容を国際人権法の視点から精査する必要があると考えられる。こうした作業の手始めとして、既に上述の『法律時報』の小特集でも論じたが、目下のところ「提言」の内容を踏まえて、『法律時報』誌において座談会(本年7月実施予定)を企画している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度のまとめとして3月に計画していた研究会が新型コロナウィルスの蔓延に取りやめになったので早急に研究会を開催して、メンバー間の研究活動の調整と取り纏めを行いたい。また、新型コロナの影響により今年度に開催を予定していたセミナーが開催できなくなった。本研究テーマは国際連携をかなり重視しているために、この影響はかなり大きい。来年度は最終年に当たるが、来年度にこのセミナーを開催するかどうかが今懸案事項である。 最終的に研究成果は、出版物の形で公表する予定である。その場合、具体的な論点の絞り方が課題となる。例えば、(1)難民の定義との関係では、ジェンダー・女性と難民、LGBTと難民、宗教と難民等の論点の他、主要各国の難民認定制度と我が国の制度との比較考察が考えられるが、この場合、比較考察の対象を絞る必要がある。その絞り方を詰めていく必要がある。また、(2)難民認定申請者の収容および処遇を巡る問題がある。この問題は、現在法務省内において法改正を視野に入れた検討がなされている最中であるので、継続的かつ批判的な検討が必要である。(3)として、難民申請中の者の収容代替措置および難民認定者の社会的な受入環境の整備という問題がある。これらについても、各国の法制度との比較考察を視野に入れる必要がある。 以上のようなことがらについて、各分担研究者の発表と意見交換を活発化して、研究成果に繋げていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に予定していた研究会が新型コロナウィルスの蔓延により開催できなくなったので、交通費、会議費等の支出がなかったためである。
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