研究課題/領域番号 |
19K01318
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
北村 泰三 中央大学, 日本比較法研究所, 客員研究員 (30153133)
|
研究分担者 |
中坂 恵美子 中央大学, 文学部, 教授 (20284127)
建石 真公子 法政大学, 法学部, 教授 (20308795)
安藤 由香里 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 招へい准教授 (20608533)
西海 眞樹 中央大学, 法学部, 教授 (50180576)
谷口 洋幸 青山学院大学, 法学部, 教授 (90468843)
佐々木 亮 聖心女子大学, 現代教養学部, 講師 (10828594)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 難民 / 国際人権法 / 難民条約 / 庇護権 / 入管法 / ヨーロッパ人権条約 / 外国人の人権 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、引き続き難民法を中心に研究を継続してきた。研究実績としては、「国際法委員会『外国人の追放に関する条文草案』の研究(3)」を安藤由香里、佐々木亮らとの共同執筆により公表した(比較法雑誌56巻1号(2022年)27-60頁)。本稿によって、国際法委員会の外国人の追放に関する条文草案の全体について、検討してまとめることができた。また、Yonsei Law Journal に”Toward a More Human Rights-Based Refugee Law Reform in Japan, と題する論文を公表した。最近の我が国の裁判判決について2点評釈を公表した。➀「難民不認定処分と裁判を受ける権利」をジュリスト令和3年度重要判例解説(1570号、2022、250-251頁)であり、また②「トルコ国籍クルド人の難民該当性を認容した判決」(新判例解説Watch、32号、2023年4月)である。ヨーロッパ人権裁判所のJ.K対スウェーデン事件判決についても人権判例報第6号に執筆した(現在印刷中)。 2022年7月2日には、「ウクライナ侵攻と国際法」と題するウェビナーを開催した。本セミナーでは、新井京同志社大学教授が「ウクライナ侵攻と国際法」、尾崎久仁子中央大学特任教授が「ウクライナ侵攻と国際刑事法」、中坂恵美子中央大学教授が「EUのウクライナ避難民保護」、私がウクライナ避難民に対する日本の対応についてスピーチを行った。約250名が参加した。 LGBTIの難民認定申請者に関する問題についても研究を進めており、11月には、大阪の難民保護活動を行っている市民団体RAFICの会合において、LGBTI難民の認定に関する問題について報告を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究を通じて、従来、国家主権の派生として、国家は外国人の出入国に関する大幅な裁量権を有すると考えられてきたし、我が国では特に最近でもマクリーン事件最高裁判決の影響から脱していない。しかし、外国人の追放に関する条文草案やヨーロッパ人権裁判所等の判例をみると近年の国際人権法の発展により、外国人の追放できる理由には、かなりの規制が及ぶことが論証できかと思われる。 本研究のテーマの重要な視点である難民問題の多様化については、宗教的な信念を理由とする良心的兵役拒否者、ジェンーの視点からは、セクシャル・マイノリティ、また戦争避難民などの大量避難民の難民該当性に関する問題点を検討してきた。その研究の成果はすべて公表した訳ではないが、一応の肯定的な結論を得ることが。せくシャル・マイノリティの我が国でも大阪地裁でLGBT難民を認める判決が初めて下された。韓国の高等法院においても、同様にLGBT難民を認定する判決が出たところであり、韓国語の判決文を入手して、翻訳者に依頼して日本語に翻訳をしたところである。
|
今後の研究の推進方策 |
研究成果をとりまとめて公表することを念頭において執筆を進めている。これまでの研究をただ単に1冊の本とするのではなく、学術的な研究書としての出版を構想している。仮に「難民保護と国際人権」のようなタイトルを考えている。内容はまだ固まっていないが、我が国が難民条約を批准してから30年以上が経過したが、その間の難民保護の実績は非常に乏しい原因はなぜかを探り、それを是正して実効的な難民保護に変化させるためには何が必要なのかを考察する。大きくみると、(1)原因の分析と(2)解決策の考察に分けられる。 原因の分析としては、難民条約上の難民の定義は、1951年に採択されて以後、国際社会の変化に応じて解釈が拡大されてきたにもかかわらず、我が国の難民認定実務では、伝統的な政治難民を中心とする難民観に固執しているからである。また、我が国では、難民条約の解釈に際して、国際人権条約の影響を全く無視していることが挙げれる。難民条約が我が国の国内で完結していて、影響をほとんど回避する形で運用されていることが挙げられる。また、不服申立ての任を委ねられている機関が独立性を与えられていないことを指摘することができる。このような問題を是正するための 対策としては、難民条約の解釈に際して国際的な人権条約の解釈と矛盾がないようにすることである。また、難民認定に対する異議申立(不服審査)は、現在の難民審査参与員制度を改革して、独立した第三者機関を設置して、公正な審査を行う事が必要である。そのための方途としてUNHCRとの協力関係の一層の強化の他、我が国でも諸外国における難民認定に取り入れられている第三者機関に倣った制度的改革が課題となる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の公表が若干遅れているので、仕上げのための時間を確保するために使用計画を変更した。
|