研究課題/領域番号 |
19K01320
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
石堂 典秀 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (20277247)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ビジネスと人権指導原則 / 暴力 / ハラスメント / オンラインハラスメント / 人権デユーデリジェンス |
研究実績の概要 |
2021年度は、2つの国際的なシンポジウムにおいて報告をさせていただいた。1つは、オリンピックを契機に国連の「ビジネスと人権指導原則」を採用する動きとそれを具体化していくための課題を論じた。もう1つは、インターネットやSNSの普及により選手とファンとの間が直接結びつくことができるようになったが、その一方で、誹謗中傷や盗撮といったオフライン上の問題がオンライン上にも影響するようになり、これらがデジタル化することでさらに拡散し問題を複雑化してきていることを分析し、今後の対応策について論じた。また、国内学会においては、日本においては一向に暴力・パワハラ・セクハラ問題は沈静化していかないが、海外における取り組み事例を中心に報告を行い、議論を行った。この報告内容は論文として学会誌に掲載される予定である。この他、論文としては、雑誌「体育の科学」にて「スポーツと人権」を著した。スポーツ選手をとりまく様々な人権侵害の事案について検討を加えていった。また、「スポーツ競技の操作に関する欧州評議会条約(マコリン条約)の意義と課題」という論文も著した。マコリン条約は、スポーツベッティングにおける違法な行為や八百長行為を取り締まるための国際的な条約である。八百長行為はスポーツのインテグリティに対する重大な脅威である。マコリン条約をもとにしつつ、八百長行為のみならず、ドーピング、セーフガーディングといったスポーツにおけるインテグリティを包括的に保護するための動向に着目している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つの国際的なシンポジウムにて、報告を行った。1つは、第10回国際スポーツビジネスシンポジウム(マインツ大学・筑波大学主催)にて、「A New Trend towards Human Right Protection in Sport Mega Events」というテーマで、メガスポーツイベントにおける人権保障として国連の「ビジネスと人権指導原則」の役割と東京オリパラ大会での取り組みを紹介し、今後の課題について議論を行った。もう1つは、第15回オリンピック・パラリンピック研究国際シンポジウムにて、「Legal and Ethical System to Protect Athletes from Digital Harassment」というテーマで報告を行った。オリンピックやワールドカップなどの国際大会では、選手は世界中の注目の的になる一方で、激しい誹謗中傷の対象になることもある。これら選手の人権保障のあり方の枠組みについて議論を行った。 また、国内では、日本体育・スポーツ政策学会第31回大会シンポジウムにて、「海外における体罰・虐待防止の制度構築の現状と課題」というテーマで報告を行った。また、日本ジェンダー法学会シンポジウム「スポーツとジェンダー法学」にて「スポーツにおけるハラスメント・暴力に関する法的諸問題」というテーマで報告を行った。選手を暴力・セクハラから守るための枠組みについて海外の取り組みを中心に検討を行い、報告した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、コロナ禍の状況で、海外での調査が行えるかどうか不透明の部分はあるが、現在、国際サッカー連盟(FIFA)のスポーツ法講習会への参加が認められ、様々な関係者と知り合うことができている。今年度開催されるワールドカップにおける人権デユーデリジェンスの状況についても調査を行いたいと考えている。また、東京オリパラ大会においては、人権や労働問題に配慮した調達コードが作成された。実際の運用状況に関しても関係者にヒアリングを行いたいと考えている。また、現在調査研究を進めている、デジタルハラスメントの問題はスポーツ団体によるイニシアティブが重要な鍵となってきている。国際的な人権保障の枠組みの構築が必要不可欠と考え、関係団体への調査を行っているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響のため、国内・海外調査を実施することができなかったため、旅費費用などが未使用となった。そのため、次年度使用額が発生した。コロナウイルスの影響が懸念されるところであるが、状況を見ながら現地調査を実施したいと考えている。
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