研究課題/領域番号 |
19K01321
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
吾郷 眞一 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (50114202)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ビジネスと人権 / 保護 尊重および救済枠組み / CSR / SDGs / グローバルガバナンス / 国際人権保障 / ソフトロー |
研究実績の概要 |
コロナ禍が継続する中、出版物、オンライン研究会参加を通じて新たな知見を獲得した。そのなかで特記すべき事項としては、ビジネスと人権概念の重要要素である社会権を実質的に実現する方法として、社会保険労務士の役割に着目し、社労士の人々と研究会をオンラインで催し、社労士という士業で何をどこまで実現できるか、ビジネスと人権国連指導原則の推進主体として、何が求められて何をすることができるかをある程度明らかにできたことが実績としてあげられる。21年11月には社労士連合会でウェビナーを開催し、国連指導原則が法的にいかなる意味を持っているかを発表し、社労士の活動の中に入れることができることを述べ、フィードバックを受けた。また、指導原則を研究する海外の研究者とオンラインでつながり、ダンディー大学のビジネスと人権研究センターが主催する指導原則についてのウェビナーシリーズで指導原則の中の労働に着目した部分が、既存のシステムの上ですでに指導原則推進の機能を果していることについて発表し、同じウェビナーに登壇した他の研究者と意見交換を行い、おおむねその方向性について賛同を得た。また、そのセンターが推奨する指導原則の枠組条約化という考え方を当研究代表者も肯定的にとらえることから、その方向性について、日本の研究者、実務家との交流を図る意味で、2022年3月にビジネスと人権ロイヤーズネットワークという主として弁護士からなる団体とのウェビナー討論を主催した。近い将来京都大学国際法研究会の場でも同種の意見交換を準備している。ただ、もっとも獲得する情報量が多い国連グローバルフォーラムが2021年度も開かれなかったため、全体としての研究実績蓄積には多少の遅れが生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に続き学会、研究大会への参加がほぼゼロに近かったため、一部オンラインで参加できたものの、多くは出版物、オンライン情報の収集によって知見を獲得するに留まり、対面での意見交換ができなかったことが大きく影響している。大容量記憶装置や遠隔会議用カメラなどのパソコン周辺機器を拡充し、オンラインでの知見獲得に努力はしたが、アナログ方式で行う意見交換、資料収集には及ばない場合が多い。困難性がある中、研究内容の発表、オンラインでの意見交換、論文の執筆は、完全とは言えないにしても、ある程度予定通り遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ感染状況がやや改善の方向を示しているので、いくつかの国内及び海外出張を最終年度こそ実施し、遅れを取り戻す。しかし、予想通りに状況が改善されない場合も考えられるため、その時は限定的な情報量の中で、初年度からの研究成果をまとめ、意味ある研究成果を学会発表、出版物として残していく。2022年8月刊行予定のILO協議会機関紙「ワーク&ライフ」の中で、中核的労働基準にとってのビジネスと人権について執筆し、2022年度中に刊行予定の単著「国際経済社会法で平和を創る」(信山社)の中でビジネスと人権概念を重要課題として位置づける。2022年10月にマニラで開催予定のアジア労働法学会で、アジアにおけるビジネスと人権の状況について発表を予定する。2023年6月開催予定のILAパリ大会での学会発表へエントリーしており、ビジネスと人権と労働の側面についての発表を依頼されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で国内外の出張を全く行えなかったため、出張予算(アジア国際法学会・東京2021年7月、国連グローバルフォーラム・ジュネーブ2021年11月)がそのまま残ってしまったため、研究の1年延長を申請した。2022年度には、4月に東京ILO駐日事務所におけるILOが行うビジネスと人権に関する取組みについてのブリーフィングを受け(執行済み)、10月にマニラで開催されるアジア労働法学会での本主題の発表・研究、その他若干の書籍・文房具、パソコン周辺機器購入などを予定している。
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