最終年度は、コロナ禍が一段落して、海外渡航も行いやすくなったので、タイ、マレーシア、フィリピン、スイス出張を実現し、まずタイでは、タマサート大学においてビジネスと人権問題を主題にした公開セミナーを開催し、国際法研究者及び人権団体の代表者と意見交換を行った。タイにおける本課題の研究状況が確認された。タイにおいては、一応国内人権委員会が設置されてはいるが、現政権下での人権状況は悪く、出席していたアムネスティーインターナショナルの代表が、政府により最近事務所が閉鎖されたことについて、訴えがなされた。 マレーシアでは、マラヤ大学において、公開の(タマサート大学で開催したものと同じ内容の)セミナーを開催したが、マレーシアにおいては、この問題がほとんど議論されていないことを知った。 年末に行われたフィリピン大学(マニラ、ディリマンキャンパス)では、アジア労働法学会研究大会に出席し、アジア各地での労働法学者とビジネスと人権に関わる研究状況について意見交換を行った。 9月に上梓した「国際経済社会法で平和を創る」(信山社)(末尾に科研支援を明記)の2つの章(全10章)で、直接ビジネスと人権に関連する論考を掲げ、これまでの研究成果の発表の一部とした。 社会への還元活動としては、世界人権問題研究所のプロジェクトチーム5(ビジネスと人権)のチームリーダーとして、研究会を2か月に一度の頻度で主催するとともに、7月には研究所の人権大学講座において、「ビジネスと人権が求めているもの」と題する一般市民を対象とする講演を行った。年末には「紛争地域におけるビジネスと人権」について研究所機関誌の「グローブ」に短いエキスパートコメントを発表した。その他、京都新聞「人権ミニ講座」に同じ問題で記事を書き、地元の放送局によって2週間にわたり、アナウンサーによる朗読がなされた。
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