研究課題
基盤研究(C)
冷戦の終了により国連、欧州連合など国際条約に基づく様々な法秩序が活性化し、国際関係における法の支配の実現が期待されたが、他方で、各法秩序はそれぞれの価値や原理に基づき機能するため、それらの間で深刻な衝突が発生するようになった。本研究は、かかる抵触状況に対応するための諸理論を、国際憲法論、立憲的多元主義、強度の多元主義に大別し、とりわけ、最後の立場に属するラディカル多元主義の意義を示した。かかる検討のための実践例として、個人を対象とする国連の制裁と人権法の抵触に関する諸事例をとりあげた。
国際法学
国際法のフラグメンテーションに対する理論的対応として、これまでの国際法学においてはグローバル立憲主義が主流的立場であったが、本研究の検討により、平和維持と人権という分野に限ってではあるが、多元主義という代替的立場の意義が示された。さらに、本研究が扱った国連安保理の制裁と人権法の抵触に関する諸判例と、それにともなう安保理の手続改革は、国際テロリズムの規制という実践的文脈からも極めて重要な事例であるため、本研究の成果はかかる領域における法的・政策的な意義を有する。