研究課題/領域番号 |
19K01326
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
長谷河 亜希子 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (00431429)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 競争法 / フリーランス / 独占禁止法 / 労働市場 / 反トラスト法 |
研究実績の概要 |
本研究は、競争法の観点から、フリーランス等の個人事業主が抱える諸問題の対応策について検討することを目的としている。2022年度は、主に次の3点について研究を進めた。 1)引き続き、使用者の反競争的行為に対する、米国司法省反トラスト局(DOJ)と連邦取引委員会(FTC)の動向を検討した。賃金カルテル、引き抜き禁止協定の刑事訴追事案については無罪判決も出ているが、競争当局の法律構成自体は否定されていない。雇用契約終了後の競業避止義務に関しては、DOJがシャーマン法1条の適用可能性を示した意見書を提出したのに加え、2023年1月以降、FTCが当該義務が関係する4件の事案につき、FTC法5条違反で提訴している。また、2023年1月には、FTCが当該義務を労働者に課すことを禁ずるFTC規則案を公表し、パブリックコメントを募集した。 2)さらに、個人事業主の共同行為に関して競争法の適用を除外し、彼らの集団交渉を後押ししようとする動向についても分析を継続した。例えば、米国ではDOJやFTCが労働者の定義を分かりやすく、かつ拡張すること等を要請していたところ、労働省が、2022月10月労働者とIndependent Contractorの分類に関するガイドラインの改定案を公表した。 3)日本の労組法上の労働者の定義は広く、フリーランスに多くが労組を結成できる。日本港運協会事件は、長年にわたり、産別労組と使用者団体間で、最低賃金に関する労使協定を締結してきたが、使用者側が、当該協定が独禁法に抵触するとして交渉を拒否したことから、産別労組が都労委に不当労働行為の救済を申し立てた(現在、中労委に係属中)という事件である。この件をきっかけとして、独禁法制定時の議論、最低賃金を協定により上させることの意義と独禁法の目的との親和性等につき検討を深めることで、労組の行為と独禁法の関係について研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度に引き続き、労働問題への競争法の適用に関する米国競争当局の動向に関する分析が重要な研究の一つであった。これらは、この数年、多数の新しい動向がみられる分野であり、毎年度、前年度の研究を、次年度におけるさらなる分析へとつなげることができている。また、今年度は、産別労組関連の紛争において生じている独禁法がらみの諸問題についても、研究を深めることができた。2023年に入って公表されたFTCの競業避止義務禁止規則案、および、日本に関しては、国会で審議中の「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」の分析にも取り掛かっており、次年度への足掛かりを作ることもできた。従って、おおよそ順調な進捗状況と言える。
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今後の研究の推進方策 |
まず、引き続き、労働市場に関連する米の競争当局の動向及び司法の反応について研究を進めたい。例えば、企業結合規制の見直し(労働市場への影響をどのように考慮することになるのか)については引き続き注目したい。雇用契約終了後の競業避止義務に関するFTC規則案に加えて、2023年に入ってからFTCがFTC5条違反で4件の競業避止義務関連の事案を提訴したことから、それらの詳細な分析を行いたい。「労働者」の定義が大変に広く、興味深い。また、DOJ、FTCがともに米国で進行中の労働問題が関係する民事訴訟に、活発に意見書を提出していることから、それらの分析を通じて、DOJ、FTCの政策動向を探りたい。 米国の場合、フリーランス(個人事業主)らは、労組を結成できない。ただし、それ(労働者の定義)とは別に、競争法の適用除外の対象者の範囲(例えば、個人事業主らによる団体交渉は競争法の適用対象か否か)を定めることができるというのが、今日の議論の傾向である。この議論は、日本のフリーランス・個人事業主らによる団体行動に対する独禁法の適用除外の範囲等を検討する上でも参考となる。従って、この議論に示唆を与えている判決(Hipica v. Confed. de Jinetes, 30 F.4th 306 (1st Cir. 2022)) 等の分析を進めたい。 加えて、日本では現在、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」が国会にて審議中である。この法律により、フリーランスに対していかなる保護が与えられることになるのかについても詳しい分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
この間、コロナの影響で、旅費が極端に減少したため、次年度使用額が生じた。今年度から、関係する研究会が対面で行われるようになりつつあることから、旅費が増大する予定である。
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