研究課題/領域番号 |
19K01332
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
清水 泰幸 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (90432153)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会保障法 / フランス / 家族給付 / 所得再配分 / 選択と集中 / 家族係数 / 所得制限 |
研究実績の概要 |
2021年度も引き続きコロナ禍の影響を受けており、その意味で進捗は限定的なところがある。アウトプットする段階がようやく見えてきたところであり、初秋を締切とする学内紀要への発表を予定している。 昨年度から引き続いて文献調査が研究のほとんどを占める中で、昨今の給付行政から着想を得るところもあった。コロナ禍での子育て世代向けの給付金や住民税非課税世帯への給付金がこれまで数度行われてきたところであるが、これらは所得制限のもとでの給付となっており、給付対象者について選択と集中を意識したものと言える。とはいえ、選択と集中の効果を客観的に明らかすることにつきこれまで議論の蓄積はなく、こうした政策の是非は印象論の次元に留まってきたと思われる。 近年、フランスの家族給付では、所得制限や所得に応じた支給額の調整がいわばトレンドになっているが、他方で、親の経済状況が子どもの受益の機会に影響するのは不平等であるという議論も根強い。 こうした観点に加えて、フランスにおいても所得制限つきの給付に焦点を当てた論文が少なからず見られるようになってきた。議論の中心としては、所得制限を付することにより給付制度が貧困対策になってしまい、それ自体が陳腐化するという批判が挙げられる。すなわち、多くの人を制度加入させることで効果的にリスクを分散させてきたのが社会保障であったはずが、これと矛盾するという論点である。また、数値的には測りようがないが、連帯という効能を弱体化させ社会の分断という悪影響を伴うことも指摘されている。現在のところ、このような基礎理論に重点をおいて研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響により、国内海外とも出張が事実上不可能となり、研究が大きく制約されてしまっている。そこで本研究課題では当初3年間の予定だったものを1年延長して2022年度までとした。これにより、研究の進捗は何とか間に合うような状況にある。今年度も実務関係者へのインタビューなど現地調査への望みはつなぎたいところではあるが、依然として海外への出張が可能となるかは不透明である。現地調査が不可能であれば、この部分については断念して研究を進めざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
もしインタビューなどフランスでの現地調査ができなければ、それなしで研究課題を遂行する他はない。この部分については、給付行政一般について、行政法の領域などにも目配りすることでボリューム的なところを確保することにしている
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次年度使用額が生じた理由 |
元々旅費を賄うことを主要な目的として本研究課題を申請したところ、昨今、国内海外とも出張が事実上不可能となり、かなりの部分が執行ができなくなっている。こうした事情から研究期間を延長して、2022年度こそ海外での現地調査を可能にしたいと望みを掛け、次年度使用額が生じた次第である。状況が好転しなかった場合には、代わりの使途として老朽化した電子機器の購入を考えている。
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