研究課題/領域番号 |
19K01332
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
清水 泰幸 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (90432153)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 家族給付 / フランス / 選択と集中 / 児童手当 / 社会保障 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、社会保障における「選択と集中」に焦点を当てつつ、貧困の解消に注力することが社会保険の普遍性を侵食することを中心的な関心事項としている。つまり、富裕層を給付から排除することは、社会な分断および制度の陳腐化を招くかという論点、言い換えれば、社会保障の中に効率的な貧困対策以上の価値を積極的に見出すことができるかである。 昨今、日本の児童手当の所得制限を撤廃しようとする動きが見られるが、これは児童手当の所得制限を境界とする富裕層とそれ以外の分断が改めて注目されたゆえである。このことは、社会保障の機能が財の効率的な分配という側面では足りず、どのような社会的役割が期待されているのかという本質的な問いに他ならない。目下の議論の中心は財源の調達にあるが、財源をどこに求めるかも、当該制度を性格を決定するのに大きな影響を持つ。こうした点について理解を深めるため、児童手当の歴史研究も進めている。 貧困と児童施策という観点からは、フランスでは、ひとり親家族それ自体の貧困の他に、子どもと同居していない側の親(多くは父親)の経済状況も社会的な課題になっている。すなわち、そのような父親の経済状態が芳しくなく、結果として養育費の不払いを来している例が少なくないことが指摘されている。したがって、ひとり親家族に対する政策は、それのみに対する支援のみでは限界があるが、他方で、児童施策が貧困施策に吸収されるバイアスが強度に存在するとも言える。 あるいはまた、財源問題について知見を得るため、フランスの社会保障財政法律の研究についても並行して進めている。社会保障財政の逼迫に苦しむのは、先進国共通の課題であり、フランスも例外ではない。社会保障の重点方針を明確にして、効率的な財政運営に努めようとしている。 総まとめに向けて、以上のような論点を中心に研究を進めている
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響により、当初計画していたフランスでの現地調査がままならず、その影響が2023年まで及んでいる。また、若干の体調不良により、昨年度に予定していた論文の公表がずれ込んでしまい、この点についても今年度中に遅れを取り戻す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究の総まとめに向けて、2023年度は国内外ともに移動に伴う支障が大方解消されたので、現地調査を実施できると考えている。こうした未実施の部分を補い、また、今日的ないしアップトゥデートな話題を提供できるように、政府が掲げている日本の「異次元」の子育て支援政策の議論状況から示唆を得つつ、論文発表を通して成果を上げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響が残る中で海外での現地調査を行うには困難があり、現地調査については資金を残すことで2023年度の実施可能性を確保したため。
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