日本において、児童手当の所得制限の撤廃が政府の目玉政策として注目されているが、所得制限の撤廃それ自体が出生率の向上に繋がるわけではない。ここでは、児童手当という社会システムの中に、いかにして人々をつなぎ止めるかが試されているのである。このことは、児童手当のみならず、社会保障制度全体において当てはまる。 「選択と集中」は財源の効果的な活用という次元に議論が矮小化される傾向があるが、本来の意義はそれに留まるものではない。社会における平等および公正の在処に係る問題であることはもちろんであるし、社会システムから除外者を出さないことの意味を顧みなければならない。
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