研究課題/領域番号 |
19K01342
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
東本 愛香 成城大学, 治療的司法研究センター, 客員研究員 (00595366)
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研究分担者 |
西中 宏吏 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (30568788)
五十嵐 禎人 千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 教授 (40332374)
後藤 弘子 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (70234995)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 就労支援 / 出所者 / 保護要因 / 心理社会的要因 / 就労維持 |
研究実績の概要 |
本研究は、刑事施設等出所者の就労維持に関わる要因について、心理社会的視点で検討することを目的としている。当該年度は、国内外の学会において出所者の生活状況と精神的健康度についての調査報告を行うとともに、施設内、社会内の支援状況についての意見交換を行った。 出所者を対象とした質問紙を用いた調査については、自立準備ホームや協力雇用主の協力を得て、58名の出所者からの回答を得た。 施設入所経験者の出所後の主観的健康感の低さは顕著であり、親族との関わりも希薄な状況もみられ、主観的な健康度や疲労が生じていることが示唆された。経済状況として、主観的な疲労感を感じていない人は、貯蓄がある傾向がみられた。就労が維持しているという人は、日常会話をする人がいるということ、出所に向けて雇用主との面接を経験しているという人に多くみられた。 一般よりも低い健康度という中で、より主観的健康感が低い人ほど、キャリア成熟は高いという結果となり、より向犯罪的思考が高い人ほど、職業キャリア成熟や人生キャリア成熟がより進んでいるという結果となった。この傾向は、限定的である可能性が考えられるが、受刑者の楽観性バイアスの高さを指摘する報告もあり、自身にとって都合の悪い情報など、状況をメタ認知する力が影響していることが推測された。主観的疲労感を強く感じるほど、余暇キャリアの計画性が高い傾向があることは、自身の状態をメタ認知することにより、余暇に向けた関心や計画につながるのではないかと考えられた。 また、現行の就労支援がキャリア成熟や犯罪思考との関連は認められず、キャリア発達を意識したモジュールの提供、適切な対象者の選定についても検討課題となることが示唆された。「再犯防止には就労」という意識にとどまらず、認知バイアスにも注力し、精神的健康度やキャリア成熟を促す支援体制・プログラムが必要であると言える結果となった。
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