研究課題/領域番号 |
19K01349
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
三島 聡 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (60281268)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 警察 / 第三者機関 / アカウンタビリティ / 苦情処理 / 懲戒 |
研究実績の概要 |
本研究は、第1に日本の警察関連の第三者機関の趣旨・目的、運用を調査し、どのような課題があるかを把握し、第2に海外のさまざまな第三者機関のうちの代表的なものの制度、運用を調べ、第3に上記2点をふまえて警察関連の第三者機関のあり方を検討するものである。 2020年度は、第1の点に関しては、2000年の警察刷新会議やその提言にもとづく警察法改正を中心に検討をおこない、とくに苦情申出制度については次に述べる論文で問題点を指摘した。 第2の点に関しては、2019年2月に現地調査を実施したカナダ・オンタリオ州の第三者機関の制度について論文を執筆し公刊した。同州では、1980年代初めまで、警察官の違法・不当な職務執行につき、警察内部で調査・捜査がなされ処理されていたが、警察不信・警察批判の社会的な高まりをうけて、1981年に、警察官の懲戒と連動した苦情処理制度が整備され、その中核を第三者機関が担うこととなった。そして1990年、今度は、警察官による重大事件の「捜査」につき、別の第三者機関に担当させる制度が創設された。その後、前者の苦情処理の第三者機関の制度が一時廃止されることもあったが、苦情処理・犯罪捜査それぞれつき、第三者機関の制度が発展し、ごく最近法改正がおこなわれた。上記論文はこの変遷を考察したものである。 それとともに、第2の点については、合衆国の第三者機関に関する全国組織であるNational Association for Civilian Oversight of Law Enforcementのオンラインでの年次大会に出席した。全米各地の第三者機関に関する各種の報告を聴き、合衆国の現状とその課題についての認識を深めた。 そのほか関連する研究として、被疑者取調べへの弁護人立会いに関する論文を執筆したり、2008年ドイツ未決勾留執行法模範草案の直接強制の部分を訳出したりした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記研究実績の概要に記載したように、とくに第2の課題について一定の作業を進めることができた。ただし、長引く新型コロナウィルス感染拡大の影響により国内・国外に出張して調査することが困難で、調査が思うように進んでいない。
|
今後の研究の推進方策 |
第1の課題については、公安委員会制度の分析を進めるほか、警察署協議会や留置施設視察委員会の運用の把握にも努めたい。 第2の課題については、アメリカ合衆国内の諸地域の制度やイギリス等それ以外の国の制度の調査を進め、カナダ・オンタリオ州の制度との比較をおこない、同州の制度にみられた諸課題にいかに対処しているのかなどにつき考察してみたい。 そして以上の調査や考察をふまえて第3の課題の検討につなげたい。 このほか、関連して、警察官等の捜査官が違法な取調べをおこなったばあいの処理についての事例研究もおこなう予定である。 ただし、今年度も、新型コロナウィルスの影響でどの程度の調査ができるのか見通しが立たない状況にある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、国の内外、とくに海外に出張できなかったため。今年度は、可能であれば出張し本格的な調査をおこないたいと考えている。
|