研究課題/領域番号 |
19K01351
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田口 守一 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 名誉教授 (80097592)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 企業犯罪 / 当事者主義 / 訴訟構造 / 合意制度 / 国際刑法学会 |
研究実績の概要 |
(1) 企業犯罪に関する研究課題への理論的取組みについては、その不可欠の前提となる刑事訴訟法における当事者主義に関する基礎理論をさらに固める必要があることが判明した。そこで、本研究課題の終わりに出版することを計画していた論文集の出版時期を早めて、企業犯罪研究の基礎理論を収録する論文集『刑事訴訟の構造』を2021年度内に出版することとした。 (2) そのために、新稿として、①「当事者主義訴訟構造論の再構成」、②「裁判所の求釈明義務」、③「合意手続の適正性」および④「国際刑法学会における企業犯罪に関する決議」の4本の論文を執筆した。 (3) また、2019年度に英文および独文で発表した論文の邦訳も本論文集に収録することとして、⑤New Development in Investigation Proceedings and Sanction Systems for Corporate Crimeの邦訳「日本における企業犯罪への法的対応」、および、⑥Absprachen in der japanischen Strafprozessordnung - Eine rechtsvergleichende Betrachtungの邦訳「合意制度の比較法的特色とその課題」を論文集に収めることとした。 (4) また、企業犯罪に関して、Morikazu Taguchi, Neue Herausforderungen hinsichtlich der Bekaempfung der Unternehmenskriminalitaet in Japan; in Mauro Catenacci et al (Hrsg.), Festschrift fuer Prof. Antonio Fiorella am 80. Geburtstag を執筆した(本論文はイタリアで2021年に出版予定である)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 企業犯罪に関する研究課題への理論的取組みのための当事者主義に関する基礎理論を深化させることができた。とくに、これまでの職権主義と当事者主義の二者択一論を克服して、両原則の統合論を提唱し、また、当事者追行主義の実質が被疑者・被告人の主体性の保障にあるとする当事者主義の再構成をすることで、現代型刑事司法制度の基礎理論を構築することができた。 (2) また、企業犯罪への手続的取組みにつき今日もっとも重要となっている合意制度につき、その日本的特色を明らかにして、今後の課題を指摘した。この点も今後の企業犯罪論にとって必須の論点となろう(2021年5月に予定されている日本刑法学会第99回大会第2分科会も「企業犯罪と協議・合意制度-複眼的視点からのアプローチ」をテーマとしている)。 (3) 2021年度に出版予定の『刑事訴訟の構造』では、企業犯罪への取組みに関する国際動向を国際刑法学会第20回大会「刑事司法と企業経営(Criminal Justice and Corporate Business)」の報告を中心として紹介することができた。 (4) 以上から、研究課題への取組みはほぼ順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 企業犯罪への取組みの基礎となる論文集『刑事訴訟の構造』を次年度中に出版する予定である。 (2) 企業犯罪への対応を論ずる前提理論として「合意制度」についてその理論的問題と実際的問題を、まだ日本では具体例が少なかったこともあり、外国事例を中心に検討してきたので、次年度以降は日本における具体的事案に関する情報収集とその分析を進めることとしたい。 (3) また、研究課題「企業犯罪の制裁と予防に関する多機関協働的刑事司法制度の構築に関する研究」関する具体的な日本法の研究は、国際刑法学会第20回大会決議でも示唆されたように、刑事法以外の行政法などとの学際的研究となるので、次年度以降に取組みを続けることしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)研究図書の購入を年度内に行うことができなかった。 (2)すでに図書の発注は済んでいるので、次年度には購入可能となる予定である。
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